年明けの1月2日に羽田空港で生じた衝突事故により、航空大手の日本航空(JAL)は機体の全損などで営業損失を計上する見込みだ。一方でライバルのANAは2024年、一部の機体でエンジン点検による減便を実施する。特集『総予測2024』の本稿では、“想定外”が重なる国内線シェア攻防戦に迫る。(ダイヤモンド編集部 梅野 悠)
ANA減便で首位陥落の危機
ところがJAL機で衝突事故
ANAホールディングスと日本航空(JAL)にとって、2023年は新型コロナ禍からの復活を印象付ける年となった。
背景には、北米路線や中国路線といった国際線旅客の需給が逼迫したことによる、高いイールド(旅客1人、1キロメートル当たりの収入単価)水準がある。
コロナ禍明けの23年からイールドが急上昇し、両社とも国際線の旅客数はコロナ禍前の6割強にとどまるものの、国際線の旅客収入はコロナ禍前を上回る水準に達した。
ただし、24年は好業績が一服する見込みだ。ANA関係者は「当面の間は、国際線旅客の高イールドが続く」とみるが、「中期的には各社の生産量回復に伴ってイールドの低下を想定している」という。国際線旅客の需給が緩み、運賃単価が下がれば、2社にとって減益要因となる。
ANAにとって逆風となるのが減便である。同社が運航する小型のエアバス機が搭載している、プラット・アンド・ホイットニー(P&W)社製のエンジンの点検作業に伴うものだ。
同エンジンは、製造時に内部の部品に不具合が生じた可能性があることから、P&W社が点検を指示。点検対象は計33機で、減便数は1日当たり約30便、減便率は3.6%を見込んでいる。JALには対象となる航空機はない。
ANAは減便により国内首位陥落の危機に直面することになった。ライバルのJALはシェア奪取計画をちょうどこのタイミングで仕込んでいた。
しかし年明け、“想定外”の事態が起きた。1月2日に東京・羽田空港の滑走路上でJALの大型機が海上保安庁の小型機と衝突し、両機が炎上する事故が発生したのだ。
次ページでは、エンジン点検によるANA減便に続いて、JAL機の衝突事故と、“想定外”が重なる国内線シェア攻防戦の内情に迫る。