種類や数は人ぞれぞれ
30兆〜50兆個の腸内細菌が存在

 では、私たちの腸には、どんな腸内細菌がどのくらい存在するのでしょうか。もし存在しない場合、どのようにして増やしていけばよいのでしょうか。短鎖脂肪酸を作るのに必要な菌だけ見ても、六つあります。

「人の腸には、約30兆~50兆個の腸内細菌がいるといわれていますが、どの菌がどれだけ存在するかは人それぞれです」

 こういった腸内細菌をできるだけ増やすために、食事が重要になってくるというわけです。

「たとえば、短鎖脂肪酸の生成が必要な菌を補う食べ物の例を挙げると、第1走者の糖化菌の代表格は納豆に含まれる納豆菌です。また、第2走者の乳酸菌やビフィズス菌はヨーグルトやキムチなどに、第3走者のプロピオン酸菌はチーズなど、酪酸菌はぬか漬けなどに含まれます」 

 その他にも、大豆イソフラボンから女性ホルモンに似たエクオールを作るエクオール産生菌や、チョコレートなどにも入っていて、抗ストレス効果が期待されているGABA(ギャバ)を作る菌なども知られています。

 さまざまな種類の菌で構成される腸内細菌のバランスを整える意味でも、複数の菌を補える食べ方ができれば健康的です。

「有用な菌を増やすために特定の食品ばかり集中して食べることは逆効果。健やかな腸内環境を保つためには、腸内細菌の多様性を高めることが重要です。腸内細菌は分業制なので、菌ごとに働きが異なります。バラエティに富んだ状態であれば、全体としてできることが増えるのは想像に難くないでしょう」

 特定の菌だけが多い状態は「ディスバイオーシス」と呼ばれ、さまざまな病気の原因になる可能性があります。

 例えばヨーグルトを選ぶときに「自分の腸と相性のいいヨーグルトや、求める健康効果に応じたヨーグルトを選ぶことが重要」という考え方もありますが、腸内細菌の多様性を考えれば、特定の商品に固定しない方が良いという考え方もあります。

「また、腸内細菌の多様性を高めるためには、前述の食物繊維やオリゴ糖のように、腸内細菌の“エサ”となる食べ物もしっかりと取る必要があります。自分の体そのものをつくる栄養としてだけでなく、多様性のある腸内細菌のためにエサの種類を増やす意味でも、食事バランスを考慮することは大切です」