未来がわからないのだから
いま楽しいことをやるだけ

 ただ、オーストラリアのワーホリでは同じ雇用先で半年までしか働けない。セカンドビザも取りたいと考えていた。そんなときに、インスタグラムでファームジョブを見つけた。時給31豪ドルと好条件だった。

 ところが働き始めると、週5回のシフト予定のはずが、だんだん減っていってしまった。直接雇用ではなく、派遣会社を経由しての雇用だったことが原因だとわかった。別のファームジョブに移ったが、すでに今後を見据えている。

「滞在を延長するのもありますが、カナダに行くのもありだな、と。オーストラリアに来て、いろんな国から来ている人たちに会って、日本で培った価値観はすべて完全にぶっ壊れました。なんだ、自分の好きなことをやっていいんだ、好きに生きていいんだ、とわかったんです。それこそ世の中には、遅刻の概念のない人もいるんです(笑)。それでも生きていける。生きるという感覚は大きく変わりましたね」

 最も大きいのは、お金に対する不安がまったくなくなったことだという。

「現地で仕事を見つけて、稼げばいいんですから。それができることがわかった。だから、世界のいろんなところに行って、現地で稼いで、RPG(ロールプレイングゲーム)的に生きていけるな、と。少なくとも30歳までは、ワーホリという権利を使い倒して自由に楽しんで生きていきたいと思っています」

 学生ビザは学校に行かなければいけない。就労ビザは簡単に仕事を辞められない。しかし、ワーホリは何をしていてもいいのだ。

「せっかく日本人はたくさんの国でワーホリビザがもらえるんです。そういう生き方ができる。これが、僕の見えている未来では最も楽しそうだな、と思っているので、それをやります。日本がどうなっているか、世界がどうなっているかなんて、そのときになるまで、わかんないじゃないですか。だから、どうあっても、僕が楽しいな、と思ったことをやるだけかな、と思っています」

 ワーホリなんぞに出かけて戻ってからどうするのか、と問う大人もいる。しかし、そういう大人も、実は未来が保証されているわけではまったくないことに気づいていない。実は未来は誰にもわからないのだ。

 誰にもわからない未来のために、もしも今を犠牲にしているのなら、真剣に考えたほうがいい。それは、世界のスタンダードではまったくない、ということも併せて。