溝尻さんは大阪のIT企業でシステム開発やサーバ運営を担当。オーストラリア女性と結婚し、2009年に移住した。現地のIT企業勤務などを経て、2015年に起業。ITコンサルティング、開発、外資SaaSの導入などを事業としている。

「当初はオーストラリアのクライアントを中心にネットワークなどを手がけていましたが、リモートでの仕事が増え、日本市場にアクセスできるようになりました。今では7割が日本のクライアントの案件になっています」

 オーストラリアでは、日本語とITができても、なかなか仕事にはつながらないという。しかし、ここに英語が加わると、日系のIT企業で仕事をするという選択肢が生まれる。

「実はワーホリで入ってもらっていた人で、今は日本で働いてもらっている、というケースもあります」

 ただ、ワーホリでITエンジニアとして働くことは、簡単なことではない。

「6カ月しか働けない、という縛りがあるのが、やはり大きいです。それなりの即戦力で、やれることもかなりレベルが高いものが求められます。学生ビザで来ている人からも、働ける時間に制限があるものの、たくさんアプライ(応募)いただいています。MBAや修士の方が多く、豊富な経歴を持った方を採用させていただいています」

 実は溝尻さん、IT技術者やオンラインマーケティング系の情報交換・親睦の場として、シドニーにJAIT(Japan Australia IT)という名称の団体を立ち上げ、参加者間のネットワーキングやスタートアップ支援を行っている人物でもある。

 すでにメンバーは1000人を超え、定期的にイベントを行っているという。

「こっちでIT企業に勤めている日本人もたくさん来ます。実はイベント参加は日本人じゃない人のほうが多いくらいなんですが。いろんな情報が手に入りますよ」

 ITエンジニアのスキルは、現地の就職には有利だという。ただ、やはり最後にネックになるのは、英語力。ローカルのIT企業では、マネージャー職はコミュニケーション力の高いネイティブが多いという。一方、エンジニアは7、8割が海外の人材なのだそうだ。