僕が『リーダーは偉くない。』を出版した理由
だから、ご縁があって知り合った編集者から、「立花さんのリーダーシップ論を本にまとめませんか?」というオファーを受けたときには、正直なところ二の足を踏みました。ちょっと成果が出たからといって、調子に乗って「リーダー論」を説いたりすれば、メリルリンチのときのような大失敗をするんじゃないか。そんなことも、頭をよぎったりしました。
だけど、あれこれ考えた末に、僕はそのオファーを受けることにしました。
これからの自分のために、「リーダーとは何か?」を改めて考えておく必要があると思ったのです。
というのは、僕は、新たなチャレンジを始めたからです。まず、宮城県塩釜市にある廻鮮寿司「塩釜港」の創業者・鎌田秀也さんに頼まれて、同店の社長を引き受けました。そしていま、世界中から塩釜にお寿司を食べに来てくれることを夢見て、鎌田会長、社員、スタッフ全員でチャレンジをしているところです。
また、地方の中小企業に投資し、その成長をサポートする日本企業成長支援ファンド「PROSPER」を、株式会社Plan・Do・Seeの創業者・野田豊加さんとともに設立しました。
Plan・Do・Seeは、「日本のおもてなしを世界中の人々へ。」というビジョンのもと、各地域の名建築をレストランやホテルなどに仕立てて、その地域全体の活性化をめざす超優良企業です。
そんな企業を築き上げてきた野田さんと、スポーツを通じ地域活性化にチャレンジしてきた僕が意気投合して、地方にある素晴らしい会社、歴史、伝統を、次世代に継承するためのファンドを創設。この構想に数多くの投資家の皆さまがご賛同くださり、日本企業成長支援ファンド第一号を約175億円で組成することができました。
そして、こうした新しい挑戦を成功させるためには、強靭なリーダーシップが不可欠だと考えました。そこで、自分なりの「リーダー論」を一冊の本にまとめるために、これまでの自分を振り返りながら、「リーダーシップとは何か?」を深く考えてみることには、大きな意味があると思ったのです。
リーダーシップの「本質」は何か?
そんなわけで、『リーダーは偉くない。』という本はあくまで自分のために書いたものですから、読者の皆さまに「リーダーシップについて教えよう」などというつもりはさらさらありません。
そんな大それたことはできませんし、そもそもリーダーシップというのは、きわめて属人的なものであって、僕に適したやり方が、他の方にもそのままあてはまるとは思えません。だから、この本に書いていることを、表面的に真似するのは絶対にやめてほしいと願っています。
とはいえ、リーダーシップには何かしら普遍的で本質的なものがあるのも事実だと思います。それは何か? それを僕なりに追求したのがこの本です。
ただし、すでに、ここまでお読みいただいた方はおわかりのことと思いますが、僕には賢そうなことは書けません。その点はご容赦ください。「こいつ、むちゃくちゃなこと言うなぁ」と笑っていただいて結構です。
できれば、読者の皆さまには、それぞれのご経験を踏まえながら、本書を批判的に読んでいただき、ご意見やお叱りを寄せていただければ幸いです。それを糧として、僕なりのリーダーシップに磨きをかけていきたいと考えています。そして、もしも本書が、皆さまのリーダーシップを見つめ直すきっかけになることがあるとすれば、それは望外の喜びです。
(この記事は、『リーダーは偉くない。』の一部を抜粋・編集したものです)。