2017年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの魔法』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。

ありがとうの魔法Photo: Adobe Stock

「つらい」と思うから「つらい」のであって、「つらいという現象」が存在するわけではない

 ある力士が、14勝1敗で優勝決定戦に臨みました。その日の夜に講演会があったのですが、2次会で、ある人がマイクを持ってこう言いました。

「正観さんは、『努力や頑張りはいらない』と言いますが、この力士は、3年か4年前に大関から陥落して、ものすごい苦労の結果、今場所は14勝1敗までこぎつけました。そして、また次の場所は大関に挑戦できるかもしれません。
その苦労話をNHKのアナウンサーが、しゃべっているのを聞いて、私は思わず泣いてしまいました。努力や頑張りというのは、すごくよいことだと思ったからです。そういうものが、世の中には、あるのではないでしょうか?」

 それを聞いて、私はこう言いました。

「そういう苦労話に感動するあなたの心を否定はしません。そうやって、あなたが感動して泣くというのも、否定はしません。でも、『宇宙には、こんなに悲しい話があるじゃないですか』ということになると、それは違うと言わざるを得ません。不幸や悲劇という現象は存在しなくて、「そう思う心があるだけ」なのです。
仮にこの力士が、『つらかった』『大変だった』と言い続けたのであれば、この力士のとらえ方がおかしいと思います。力士、本人が言っていないのに、アナウンサーが勝手に感情移入して、『ものすごく大変なことを克服して、すごかったですね』と言っているのであれば、そのアナウンサーのとらえ方がおかしい。力士は、それが、本当につらいのだったら、やめればいいわけですから」

「私の会社は大変な会社です」「事務所がこうなんです」「社長がこうなんです」「ひどい人ばかりなんです」と言われる方がいますが、私に言わせれば、「本当に嫌で、つらいのなら、やめればよいじゃないですか?」ということです。

 やめる選択肢があるのに本人がやめないで、このようなことを言うのは、愚痴を言っているだけです。もし本当に嫌なのだったら、「やめる」という選択もできるはずではないでしょうか?

 この力士は、やめたければ、やめることができたはずです。けれどやめなかったということは、結局、「好き」でやっていたのだと思います。

「一度は大関から陥落したのに、克服できてよかったですね」「つらい時期を乗り越え、14勝1敗という成績を残せたのは立派ですね」と、個人の感情として喜んであげるのはよいと思います。

 その力士が喜んでもかまわないし、NHKのアナウンサーが喜んでもかまいませんが、「宇宙的な事実」としては、「悲しくつらいことを乗り越えた」という事実はないようです。

 本人が、「つらい」「悲しい」と思ったら、それは本人にとって「つらい」「悲しい」ことであって、「つらい現象」「悲しい現象」が存在するわけではありません。

 ある現象が起きていることと、それに対して自分がどう論評・評価をして感情を移入するかは、別問題だと思います。

 それを、ひと言で言うと、「感情は別」ということです。

 現象と、感情は別。結局、ありとあらゆる現象はすべて「ニュートラル(中立)」で、宇宙的な意味づけ、性格づけがされているのではないようです。