3月8日は国際女性デーだ。せっかくだから「性差医療」について紹介しよう。
性差医療とは、男性と女性の解剖学的、生理学的な違いや、同じ病気でも発症率や経過が異なることを踏まえた医療を指す。
欧米では、70年以上の歴史があるが、日本では2001年、鹿児島大学医学部付属病院(当時)に国内初の女性専用外来が開設された。国内の歴史は20年余りという新しい医学・医療分野だ。
性差医療へのニーズは高く、性差医療情報ネットワークによると、18年1月23日時点で、国内の「女性外来」は308施設、「男性外来」も106施設が開設されているという。
普段よく耳にする疾患にも「性差」は存在する。
たとえば、脳卒中症例の過半数は男性で占められるが、タイプ別にみると性差の存在がわかる。
「日本脳卒中データバンク」事業の報告書(23年)によれば、脳血管が詰まる「脳梗塞」、一時的に脳血流が遮断され、24時間以内に症状が消失する「TIA」、脳の血管が破れて発症する「脳出血」の患者数は、いずれも男性が多い(それぞれ57.9%、55.1%、54.5%)。
しかし、脳動脈瘤が破裂して生じる「くも膜下出血(SAH)」だけは、女性が70.0%と大きく逆転する。日本のみならず、世界的に女性の発症率は男性の1.5~2.2倍にもなるのだ。
SAHを引き起こす「動脈瘤」は、劣化した血管壁が様々な刺激に反応し、生じる血管のコブだ。女性では血管保護作用を持つ「エストロゲン」の減少、つまり更年期とともに発生リスクが上昇。閉経後、未破裂瘤が左右の脳血管に複数見つかることもある。
女性のSAH好発年齢は、70代前半だ。未破裂のうちに動脈瘤を見つけるには、60代で脳ドックを利用するといいかもしれない。
このほか、脳梗塞の症状にも性差があるので注意したい。一般的な片まひや、片目が見えない、という前兆は男性に多く、意識障害、頭痛のほか、ろれつが回らない、声がでない(構音障害)、めまいといった前兆は女性に多い。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)