「結論に至るまでのプロセスが大切」(阿部)

川代 私も「もう1人の自分」みたいな感覚はめちゃくちゃあります。何だろう……もう1人の自分がすごい心の奥に眠ってるような感覚があって、そいつをどう引っ張り出すかみたいなのをよく考えますし。
 でも、折り合いのつけ方とかでいうと、やっぱり悩んでること自体を尊いものとして認めてあげるというのが自分の中では一番大きかったかなという気がして。悩むこと自体がわりと悪とされてる期間が長かったように思うんですよね。今の時代だともうちょっと柔らかくなってきたのかなという気はするんですけど、私が学生のときとかって本当にもう、「そんなことに時間使うなよ」みたいなのが多かったので、別にその悩む時間も必要というふうに自分で言い聞かせるというか……

阿部 そう、川代さんの本の〈どうして誰も、「悩んでもいいよ」って、言ってくれないのかなあ。〉という文章に付箋貼りました。

川代 ああ、ありがとうございます(笑)。

阿部 たったその一言で救われるというのは、まさにそうですよね。

川代 そう、そうなんですよ(笑)。

阿部 土屋太鳳さんが、ブログでファンの方から書き込みのあった「迷わなければ迷路からは出られない」という言葉を大切にされているそうなんです。本当にそうだなと。悩んだり迷ったり、自分なりの結論に至るまでの思考回路って、紆余曲折も含めて貴重な経験で。それを「悩んでも仕方ない」と言い切る一定の派閥があるのもわかるんですけど、悩まない人なんていないはずだとも思っていて。

川代 そうそうそうそう、そうなんですよね。「選ばれたい」というとこから「選ばれなくてもいい」というとこまで、この最短ルートで行きたくない。

阿部 そうなんです(笑)。

川代 行けるわけないから。こうやって行って、こう行きたいし、こういうルートを通ったから納得できてるのに、最短で行ってるように周りの人は見ちゃうから。

阿部 「選ばれなくてよかった」という結論を話すためにも、めちゃめちゃ選ばれたい!という正直な気持ちからはじめたほうが僕は伝わるものがあると思っていて。いきなり選ばれなくてもいい! なんて、いや、そんなわけないだろうと(笑)。

川代 (笑)

阿部 人は、いろいろ考えて結論を出すという喜びもあるはずだし、選ばれたいと思ってしっかり選ばれる快感もあるはずだし、『あの日、選ばれなかった君へ』でも、できるだけ正直に書きたいと思ったんですよね。「やっぱり選ばれなくてもよかったんだよ」と言うのは、そう言えるまでのストーリーが必要で。

川代 うんうん、そうですよね。

阿部 ドラマも、映画も、結論だけ取り出して言うよりも、そこに至るまでの道のりが命だと思っているので、やっぱり選ばれないこともあるけど、そういう自分をどうやって認めていってあげるか、それこそが大事だなと思っています。

自分の居場所を見つけるには、自分の中の「狂」を見つけること川代紗生(かわしろ・さき)
1992年、東京都生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。2014年からWEB天狼院書店で書き始めたブログ「川代ノート」が人気を得る。「福岡天狼院」店長時代にレシピを考案したカフェメニュー「元彼が好きだったバターチキンカレー」がヒットし、天狼院書店の看板メニューに。メニュー告知用に書いた記事がバズを起こし、2021年2月、テレビ朝日系『激レアさんを連れてきた。』に取り上げられた。現在はフリーランスライターとしても活動中。著書に『私の居場所が見つからない。』(ダイヤモンド社)、『元カレごはん埋葬委員会』(サンマーク出版)。