「人の目を気にせず自分らしく生きたいのに、『認められたい』という気持ちを捨てられない」と葛藤し続け、「承認欲求」から解放される方法を研究し続けてきた──そう語るのは、エッセイ『私の居場所が見つからない。』の著者・川代紗生氏だ。8年かけて綴ってきた彼女のブログは、同じ生きづらさを抱える読者から大きな反響を呼び、10万PV超えのバズを連発。その葛藤の記録をまとめた本書は、「一番言ってほしかったことがたくさん書かれていた」「赤裸々な感情に揺さぶられ、思わず泣いてしまった」など、共感の声が寄せられている。
そんな「生きづらさをエネルギーに変えるためのヒント」が詰まった1冊。今回は、疲れた心に寄り添う本書の発売を記念し、未収録エッセイの一部を抜粋・編集して紹介する。
「価値がある人」と「価値がない人」
その差が可視化されてしまったら?
星新一のショート・ショートに、「価値検査器」(短編集『未来いそっぷ』に収録)という作品がある。
ひょんなことから、あらゆるものの価値を測る機械を手に入れた男の話だ。
その検査器は万能で、骨董品にでも土地にでも、何にでも使うことができる。それを押し当てるだけで、不良品かどうかも、どれくらいの価値があるのかもわかる。だからその機械が「いい」と判断したものを買えば、まず間違いないというわけだ。
検査器はモノに対してだけでなく、人間にも使うことができた。彼は、お嫁さんですらそれに頼って決めてしまう。会社の従業員もそれで決めるのだ。それに頼りさえすれば、絶対に優秀な社員を手に入れられるからだ。
そうして価値検査器のおかげで巨万の富を手に入れた彼だったが、ついに、自分が最も恐れていたことをする。自分自身にそれを当てるのだ。検査器は、大いに価値があると判定を下した。大喜びする彼だったが、実はその「すばらしい機械を持っている男」に価値があるというだけで、何も持っていない彼にはなんの価値もなく、ただのつまらない男に過ぎなかった、という、いかにも星新一らしい、ブラックなオチでその話は終わる。