それでもやはり収入の格差はあって、「なんかちょっと気持ちが悪い」と感じたんです。それを夫に伝えたんですよ。そしたら彼が、「今は僕が稼げるときだから僕が稼いで、みっつんはできるときにできることをしてくれればいいし、実際もうそうしてくれてるから、それでいいんじゃないか」ということを言ってくれて。すごく気持ちが楽になりました。「できるほうができるときにできることをする」が2人のスローガンのようになったのはそのときで、子どもが生まれてからも引き続き実践している感じです。
「家事は下」という差別意識
――家計を担うリカさんに負い目を感じる瞬間があったんですね。
ありましたね。「自分も男なのに稼げなくて恥ずかしい」というか。心のどこかに、「男はこうあるべき」というジェンダーロール(性役割)バイアスがあったのかもしれません。
よく覚えているのは、リカの妹の言葉です。「でも、みっつんは家事育児っていうすごく大切な、価値のある仕事をしてるでしょ。だから悩まなくていいんじゃないの」と言ってくれて。もしかしたら自分は、「外で働くほうが上で、家で家事をするほうが下」という差別意識を知らず知らずのうちに持っていたのかもしれないと気づかされました。
――「外で働くほうが上」という意識は、日本では根強いと感じます。「誰が食わしてやってると思ってるんだ」というセリフもあるぐらいですし。
家父長制的な意識ですよね。日本の場合は、「扶養する側/される側」というように、法制度そのものが家父長制に基づいている。このラベル付けが原因で、無意識のうちに家庭内のヒエラルキーができあがっているのではないかと思います。家族ってお互いが助け合って初めて成り立つものなのに。
――スウェーデンに「扶養」の概念はないんですか?
ないですね。まず、税制が全く違います。スウェーデンには「主婦」という概念もありません。「ヘンマフルウ(hemma:家、fru:妻)」という言葉はありますが、1970年代頃から、「夫に養われる妻」という日本的な主婦の意味を脱していったようです。税制改革が進んだのもこの時期で、世帯ではなく個人が基本単位になりました。スウェーデンはもともと人口が少ない国で、国の財政を支えるために女性も頭数に入れなければという切実な歴史も背景にあったようです。