ゲイカップルでよかった

――男、女、夫、妻、父、母、親、子……私たちは無意識にたくさんのロールを演じながら生きていますよね。

 いろいろな大学で講演させてもらう機会があるのですが、学生たちがみんないい子すぎることに驚いています。大人が喜ぶような模範的な質問をわざわざ僕にしてくるんです。大人の顔色をうかがって、「生徒」というロールからはみ出ないようにしているというか。

 多分、ロールに収まっておくほうが楽なんですよね。間違いがないから。でも、そうやって自分の個を押し殺して、その場その場で期待されるロールだけを演じていたら、私たちは工場で大量生産されたロボットと同じです。

――みっつんさんは、周りから押し付けられたロールに窮屈さを感じることはありますか?

 それが、ないんですよ。自分たちがゲイカップルですごく良かったなと思っていて。ゲイというだけで、あるいはゲイカップルというだけで世間一般のロールから外れちゃっているから、始めから誰にも何も強制されていない感覚がありました。

 僕たちは結婚・育児という、一見すると社会の規範に沿った道を歩んでいるけれども、それは「結婚するべき」とか「夫婦は子どもを持つべき」といったロールを押し付けられた結果ではなく、本当に自分がやりたいと思って決めた選択の結果。むしろ、結婚も子どもも無理だと諦めていましたから。ゲイカップルであることで“当たり前”から解放されて自由になれたことは、本当に幸せだったと思います。

 すごく面白いと思うのは、YouTubeなどで発信活動をしていると、「みっつんパパの方がママ役なんですね」と頻繁に言われること。「料理するのはママ」「優しい雰囲気なのはママ」というジェンダーロールが頭の中に存在していて、そのフィルターを通して世界を見ているんですよね。僕たちはあくまでも「みっつん」「リカ」「息子くん」として生きているのに。

――権利や法制度の面で制限を受けているのはLGBTQの方々ですが、世間から与えられたロールに縛られて生きづらさを感じているのは、もしかするとマジョリティのほうかもしれないですね。

 我が家のYouTubeは女性ファンが多いのですが、「“当たり前”から解放されるから見るのが好きです」という方がすごく多くて。「周りから結婚しろ、お見合いしろと言われるけど、断れるようになりました」といったコメントもいただきます。“普通”を外れた僕らが幸せに暮らしているのを見て、「自分も“普通”じゃなくていいんだ」と感じていらっしゃるのでしょう。すごく嬉しいですね。