相手を知ろうとし続ける

――家事・育児に関して、お互い「もっとこうしてほしい」という要望や不満はないんですか?

 リカの洗濯物の干し方が気になったことはありましたよ。「いやちょっとここは広げて干さないと皺になっちゃうよ」みたいな。彼にも伝えました。でも、家事って慣れですから。今はお互い「本当にありがとう」という気持ちでやっています。

――ちゃんとリカさんに伝えたんですね。パートナー間のコミュニケーションって、意外と気を遣いませんか?

 自分たちの性格を理解したうえでコミュニケーションを取ることが大事だと思っています。例えば僕はハッキリものを言うタイプで、夫は反対にハッキリものを言うのがすごく苦手なタイプ。その特徴を踏まえたうえで、お互いに意見を聞き合う、伝え合うようにしています。

 もうひとつ気をつけているのは、「相手を知ろうとし続けること」。人間って常に変わり続ける存在じゃないですか。僕たちは知り合って15年経ちますが、2人とも時期によって仕事が変わり、環境が変わり、性格や考えが変わってきた。だから、「相手のことはよく理解している」と安寧せず、「今はどう思っているんだろう」と、相手を常に知り続けようとする姿勢が大事だと思います。僕も、「前はこう言ってたじゃん」とイラっとしてしまうことはありますけどね。

――2人とも仕事に育児に忙しいと思うのですが、話し合う時間は意識的に作っているんですか?

 はい。普段はご飯とその直後の時間しか2人で顔を合わせて話す時間がないので、そこで集中して話し合います。「今日は絶対ちゃんと話す」と決めた日は、子どもがかまってほしそうにしても、「今パパたちすごく大事な話してるから、ちょっと待ってて。後で話聞くね」としっかり伝えて、時間をかけて2人で話します。

 子どもを祖父母に預けて2人でデートに行くこともありますよ。「パパ」としてのロール(役割)から離れ、1対1の人間同士として向き合う時間を作らないと、相手のことが理解できなくなっていきますから。

――子どもを待たせる、というのが新鮮です。「常に子どもを最優先すべき」という考えが日本では一般的だと感じます。

 スウェーデンでは、「No」と言うこと、自分の意見を伝えること、相手の話を聞くことがとても大切にされていて、子どものころからそう教えられます。幼児教育の先生をしている友人からも話を聞く中で、僕自身その重要性を学び、自分の家庭でも取り入れようとしているんです。

 この教育の根底にあるのは、「子どもは1人の人間である」という考えです。確かに子どもは親が責任を持って守り育てる存在だけれども、本当は子どもである前に1人の人間であるわけです。「親」とか「子ども」というロールにそれぞれの存在を押し込めるのではなく、1対1の人間として尊重し合うことが大事ではないでしょうか。