イラストイラスト/髙栁浩太郎

「いい商品なのに顧客に響かない」…多くのビジネスパーソンが抱える課題だが、どうすれば顧客の心に響くのか。言語化コンサルタントの木暮太一さんの著書『すごい言語化 「伝わる言葉」が一瞬でみつかる方法』から、商品のウリを変えるだけで売り上げを倍増させた方法と理由を紹介する。(作家・出版社経営者・言語化コンサルタント 木暮太一)

「ビジネスは相手の課題解決」
それでも自分目線から抜けられない

 自分の商品のウリや価値を表現しようとする際に、自分目線になってしまうことはよくあります。そもそも商品の「ウリ」を考えたら、自分が相手に売りたいポイントに目が行ってしまうのは自然なことかもしれません。

 顧客が商品を買うのは「欲しいから」です。エンタメ商品の場合は少し違いますが、実益的な商品を想定すると、顧客がそれを欲しいと思うのは、「自分がしたいことができるようになるから」です。現状、何かに困っていて、その困っている状況を解決させるために商品を買うという発想ですね。

 ぼくが在籍していたリクルートでは、これを「不」と呼びます。不とは、不満・不足・不安・不便などの総称で、顧客が直面しているマイナスの状況のことを指します。そしてリクルートでは、相手の「不」を解決するからこそ、それがビジネスになると考えています。

 まずは自分たちが「ウリ」たいものではなく、相手の「不」に目が向いていないといけません。相手のどんな課題を解決するのか、どんな困った状況を改善させてあげるのかを言葉にしなければいけないわけです。

 こう説明すると、すぐに理解して賛同してもらえるケースが多いです。そして多くの方が、顧客の不に目を向けて自分の商品を説明しようとします。ただ、ここでもまだうまくいきません。というのは、ほとんどのケースで自分たちが提供したい「ウリ」をただ単にひっくり返して「課題」にしてしまうからです。

 以前、企業向けにお弁当を配達している会社さんにコンサルティングに入りました。この会社さんも自分目線から抜け出せずに苦労されていました。

 その企業では無農薬の野菜にこだわり、できるだけ天然に近い素材でお弁当を作っていました。そしてその「天然」を「ウリ」にしていました。この企業の経営者さんも、商品担当者も顧客目線になろうとはしていましたが、どうしても自分目線の表現になっていました。それは、「ウリ」を保持したまま顧客の「不」を言葉にしていたからです。そして、「無農薬などの天然素材のお弁当を食べたいけど、買えずに困っている人が顧客」という言い方になっていました。