TSMCvsインテル AI半導体決戦#3Photo:Bloomberg/gettyimages

台湾TSMCは熊本新工場の開設によって、地政学的なリスクを分散する新たなサプライチェーン構築を可能にした。そして、日本企業との緊密な協力を通じ、競合他社に先駆けて数兆ドル規模のビジネスチャンスをつかむことができるだろう。特集『TSMCvsインテル AI半導体決戦』(全6回)の#3では、熊本工場に巨額投資するTSMCの狙いをひもとく。(台湾「財訊」林宏達、翻訳・再編集/ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

日本に先端半導体市場はあるのか?
トヨタとソニーが株主である真の意味

 米インテルがファウンドリー事業を本格展開することを宣言した2日後の2月24日、台湾TSMC熊本工場の開所式が華々しく開催され、具体的な成果で競合との差を広げた。熊本工場は劉徳音氏が会長に就任して以来、TSMCが海外で稼働させた最初の半導体工場だ。地政学リスクへの耐性を付けるための、TSMCの取り組みで最も重要なステップでもある。

 2021年11月、TSMCがJapan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)設立と日本初の半導体工場建設を発表した際、日本企業の株主はソニーセミコンダクタソリューションズだけだった。生産する半導体のプロセスは22/28nmを採用し、生産能力は月間4万5000枚(300mmウエハー換算)が予定されていた。

 しかし24年1月に発表された熊本第2工場の計画では、月間生産能力は10万枚を超え、採用プロセスも成熟技術から先端技術まで7種類へと拡大した。そして、JASMの株主に、デンソーやトヨタ自動車も加わった。

 この変化は注目に値する。もともと海外からは、日本の半導体工場のプロセス技術は40nmまでしか発展しておらず、先端プロセスに投資できる半導体メーカーも不足しているため、日本には先端プロセス市場がないとみられていた。

 しかし今、日本の先端プロセスへの需要は当初の想定よりも多いようだ。