コミュ力とは相手に合わせる力

 対して、誰とでもうまくやれる人は、完璧なコミュニケーションを追い求めずにほどよく妥協することができるのです。たとえば、相手がテンションの低い人だとしたら、「これがこの人のスタンダードだから、自分もテンションを抑えて合わせよう」と考えます。

 このように相手のコミュニケーションスタイルに適応することで、相手のストレスを減らすのです。間違っても、ハイテンションで絡むことはありません。

 この相手のテンションに合わせることの重要性に気がついたのは売れっ子芸人の舞台での前説を見たときです。彼らは本番前に舞台を温めるためにいるわけですが、大体の場合、前説のときのお客さんのテンションはバラバラです。

 そんなとき、売れっ子になっていく芸人はいきなりハイテンションで飛ばすことはしません。優しい声でまずはテンションの低い人からトーンを合わせていくのです。そして、その後少しずつテンションの高いお客さんに合わせていって、最終的に会場を温めます。このやり方だと子どもからシニアまで誰もが順番に対象になりますからすごいです。

 最初から「お笑いを見に来てるんだから、元気出せよ!」というテンションだったら、押し付けがましいなと思われて、シラけてしまうでしょう。

 つまり、大事なのは自分の理想のコミュニケーションにこだわることではなく、ほどよく妥協しながら相手に合わせていくことです。

「笑顔じゃなきゃダメ」「大きな声で」など決をめつけることは、相手によって正解が変わるコミュニケーションにおいてはNGです。ぜひ頭の片隅に入れておいていただけると幸いです。