<正解>
 確実に勝つ戦略が存在するのは、 数字が小さい方

 …………え?
 こんなの、わかるはずがないのでは?
 そもそも勝てる方法が存在するとは思えません。
 どう考えても、AもBも50%の確率に賭けて答えるしかないっぽいからです。
 そしてここでも出てくる「2人は論理的な思考をする」という言葉。さらには「パーフェクトに」とあります。
 それだけ、本問が成立するにはハイレベルな論理的思考を要するということでしょう。
 ちなみにこの問題の原題は“The Seemingly Impossible Guess The Number Logic Puzzle”「ぱっと見は不可能な数字当て論理パズル」……です。
 まさに、最上級に難しい問題です。
 論理的な2人がどう考えていくのか。順を追って考えみましょう。

どう考えても、運に賭けるしかないのでは?

 すぐには状況をのみ込めない方もいるでしょう。
 まずは、与えられている情報を整理しましょう。

 “それぞれ「連続する2つの数字(正の整数)」のうち、どちらかの数字を与えられるが、相手の数字はわからない。”

 “どちらかが「相手の数字」を宣言した時点で終了となる。宣言できるのは1回のみで、間違えれば敗者となる。”

 これはたとえば、Aが20、Bが21の数字を与えられたとして、相手の数字を当てるという意味です。
 しかし2人は、相手の数字が「自分の数字-1」か「自分の数字+1」ということしかわかりません。
 つまり、

 Aは「Bの数字は19か21」ということしかわからない。
 Bは「Aの数字は20か22」ということしかわからない。

 そして、宣言を間違えたら、敗者となります。

 ……。
 やっぱり「確実に勝てる戦略」なんて、ないのでは?

勝敗が一瞬で決まる「唯一の状況」

 いえ、ただ1つだけ、確実に勝てる場合があります。
 相手の数字を断定できるシチュエーションがあるのです。
 問題文には、こうあります。

 “連続する2つの数字(正の整数)”

 両隣の数が「正の整数」ではない数字が、1つだけあります。

 それは「1」です。

 もしAが与えられた数字が「1」なら、「0」は正の整数ではないため、AはBの数字が「2」であると瞬時に見抜けます。
 Aはゲーム開始1分後の鐘が鳴ると同時にBの数字が「2」であると宣言し、ゲームに勝利します。

「単純化」から出発する

 片方に与えられた数字が「1」である場合、その人は確実に勝てることがわかりました。
「いや、それはそうだろうけど、それが解答とどう関係するの?」
 そう思った方も多いでしょう。
 でも、結論を焦ってはいけません。
 これは、ここまでに何度も登場した「単純化」の思考です。
 与えられる数字の可能性が無限にある以上、まずは「1」つずつ検証していくのです。

 ということで、2人に与えられた数字が「1」と「2」だった場合を考えました。
 次に、2人に与えられた数字が「2」と「3」だったら、どうなるでしょう。
 仮にAに「2」が、Bに「3」が与えられたとして考えてみます。

 このときAは、「Bの数字は1と3のどちらか?」で悩みます。
 このまま答えたら勝率50%の賭けになるので、Aは1回目の鐘が鳴っても沈黙を保ちます。

 Bに与えられた数字が「1」であれば、先ほどお伝えしたようにBはAが「2」だと特定できるため、1回目の鐘で回答します。
 ですが実際は「3」なので、Bも1回目の鐘では沈黙します。
 1回目の鐘で回答しなかったBを見て、Aはこう考えます。

 「もしBの数字が1なら、こちらの数字は2だと確定できるから、1回目の鐘が鳴ったときに答えるはず」
 「しかし、ゲームは続行されている」
 「ということは、Bは1ではない」

 これに気づいたAは、2回目の鐘が鳴ったときに「Bの数字は3である」と言い当てることが可能になります。

「単純」をしだいに「複雑」にしていく

 2人に与えられた数字が「2」と「3」のとき、「2」を与えられた側は「2」回目の鐘が鳴ったときに、「相手の数字は3だ」と宣言すれば勝てる。

 ということが、わかりました。
 なんとなく法則が見えてきそうです。

 次に、2人の数字が「3」と「4」だった場合を考えてみましょう。
 仮にAに「3」が、Bに「4」が与えられたとして、考えてみます。

 このときAは、「Bの数字は2と4のどちらか?」で悩みます。
 そして、こう考えます。

 「もしBの数字が2なら、Bは私(A)の数字が1か3かで悩んでいる」
 「ということは、1回目の鐘で私が解答しない場合、Bは私の数字が1ではなく3だと確信し、自分の数字が2だと確定できる」
 「つまり、Bは2回目の鐘で解答を宣言するはずだ」

 Aは自分の数字が確定できないため、1回目の鐘も2回目の鐘も沈黙します。
 一方で、実際はBの数字は「4」なので、Bも自分の数字が確定できず、1回目の鐘も2回目の鐘も沈黙します。
 その姿を見て、Aはこう考えます。

 「もしBの数字が2なら、1回目の鐘で私が沈黙したことで、自分の数字がわかるはず」
 「しかし、2回目の鐘でも解答しなかった」
 「ということは、Bは2ではない」

 これに気づいたAは、3回目の鐘が鳴ったときに「Bの数字は4である」と言い当てることが可能になります。

「法則」を見抜いて一般化する

 2人に与えられた数字が「3」と「4」のとき、「3」を与えられた側は「3」回目の鐘が鳴ったときに、「相手の数字は4だ」と宣言すれば勝てる。

 ここまでの検証を経て、この問題の本質が見えてきました。

 2人に与えられた数字が「n」と「n+1」のとき、小さい方の数字「n」を与えられた人は、「n-1」回目の鐘が鳴っても相手が解答しない場合は、相手の数字が「n+1」であると推測できる。
 よってn回目の鐘で、相手の数字は「n+1」だと宣言すれば確実に勝てる。

 ということがわかります。
 相手も自分と同じ推測をしていることが前提になりますが、問題文には「2人はパーフェクトに論理的な思考をする」とあります。
 そのため、小さい方の数字を与えられた人は、この戦略をとることで確実に勝利できます。
 反対に、

 相手より大きい数字を与えられた人には必勝法がありません。

「思考」のまとめ

 はじめに与えられた数字によって、すでに勝敗が決している。人生は非情ですね(実際には、相手も自分と同じ推測をしていることが前提になるので、現実世界でこの状況になったとき、この方法で解答をするのは勇気がいりますが……)。
 また、問題文にいきなり「鐘」が登場して困惑した人も多いでしょう。解答において何の役にも立たなそうな、ともすると存在する意味すらわからない「鐘」という要素の意味が、いまなら理解できます。解答の「タイミング」が決まっていることで、ひとつずつ可能性が消えていき、相手の数字を推測できる、というために必須だったのです。
 手がかりがまったくなく、まさに「不可能」に思えることがネックになる問題でした。
 相手と際限のない思考の読み合いをするときは、まずは「極端な場合」から想定するのがセオリーです。
 そして法則を導き出し、そこから、さまざまな場合に当てはめて検証してみます。
 この「あらゆる場合にも成立する法則」のことを、人は「論理」と呼ぶのだと思います。

 ・手がかりがまったくなく、運に賭けたくなるときも、「極端な場合」から考えて、そこから見抜いた「法則」を使って真実を導く

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター
論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者。ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1,500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。