分厚い計画書だけでは問題を解決できない
実は「デザイン」という言葉は、単にグラフィックを描くとか造形物のモデルをつくるというだけでなく、「問題を解決する」という意味があります。さらに、つくりながら考えていく、考えながらつくっていくという作業を繰り返し行うことがデザインの基本でもあります。机上の空論より、何か一つ描いてみる、つくってみるということです。
もちろん、デザインなわけですから、造形やビジュアルの美しさは重要ですが、同時に機能性も兼ね備えていなければなりません。つまり、ライフをデザインすることとは、人生が機能性だけの計画によって遂行されて味気ないものになることでも、見た目の美しさばかりを求めて、実のない機能を果たさないものになることでもない。
プランは所詮、絵に描いた餅です。大切なのは、行動の連続の中で問題を解決しながら前進するということです。子どもの頃、夏休みに入る前によく「一日のスケジュール」という円グラフを書かされたものです。でも、あの通りに実践できた人はどのくらいいるでしょうか。僕は一度も実践できたことがありません。
けれど、円グラフを描くこと自体はとても楽しかった気がします。理想を思い描いているからです。しかし、そこで満足して終わってしまうのです。もちろん、計画を立てることが悪いという意味ではありませんし、向こう見ずに行動しようと言っているのでもありません。
でも、計画に縛られると、今の時代、「問題を解決しながら進む」ことが難しくなってしまいます。予測不可能なことを予測して、それを絶対の基準とするには、あまりにも不確定な要素が多い時代なのです。