人口が増加して多くの家族がぎりぎりの生活をしていた時代には、実家に「パラサイト」したり、「引きこもり」をしたりもできません。どれほど収入が低くても「ひとりよりは結婚して二人」の方が、男女共により安定した生活を望めたのです。

未婚男女8割は「いずれ結婚するつもり」
それでもできない理由とは

 しかしながら今、「結婚しなくても、頼れる実家がある」若者にとって、「結婚」のメリットとは何でしょう。しかも「今貧しければ、将来も貧しいまま」が容易に想像できる社会で、どうして「結婚」をあえて望むでしょうか。

 しかも、家庭を新たに築くことが将来にわたりさらに経済的なリスクを負うことが予想される今日の社会においては、ますます「結婚」のインセンティブは低下していくのです。

 すると、こんな声も聞こえてきそうです。

「結婚したくない人々に、『結婚』をむりやり勧めなくてもいいんじゃない?」

 たとえ「未婚」だとしても、その状態に不満足なわけでもないんだろう、と。

 ですが、ここに次のようなデータが存在するのです。

 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が、18~34歳の未婚者に実施した調査です。それによると、男性未婚者の81.4%、女性未婚者の84.3%が、「いずれ結婚するつもり」と答えています(2021年実施)。

 今なお「独身でいる理由」の最多は、「適当な相手にまだ巡り合わないから」(24~34歳の男女)であり、次いで多い理由が「結婚する必要性を感じないから」「結婚資金が足りないから」なのです。

書影『パラサイト難婚社会』『パラサイト難婚社会』(朝日新書、朝日新聞出版)
山田昌弘 著

 つまり若年「未婚」者の8割以上が、実際は「結婚」を望んでいるのです。彼らは自ら未婚を選んでいるわけではなく、結果的に未婚になってしまっているのです。この母数には既婚者が含まれていないので、結婚した同年齢の人数を加えれば、今でも9割以上の若者が結婚を望んだということになります。

「適当な相手」が見つかり、「結婚する必要性を実感」すれば、そして「結婚資金・生活資金が十分にあれば」、彼らはいつでも「結婚したい」のです。

 でも、その状況がなかなか手に入らない。現在同居中の父母が面倒を見てくれる便利で安心な生活を放棄してでも「結婚したい」と思える相手に巡り合わないし、結婚してやっていけると確信が持てるような経済的基盤も得られない。だから結婚しない。それが、日本の「未婚社会」の実態です。