日本企業の大部分はいまだに、「働く男性+専業主婦の妻」という大前提で職場環境を維持しています。「女性活躍」「ジェンダー平等」といくら口では言ったとしても、日本の企業戦士たち(既婚男性)が毎日深夜まで働き長期のバカンスも取らずに出世を目指せるのは、家で家事全般をこなし、育児を担ってくれる伴侶の存在があるからなのです。
日本人が陥っている根本問題
「結婚のメリットって何?」
しかし、同じことを女性が目指したらどうなるでしょう。つまり朝から晩まで時間を気にせず働き、残業も厭わず、休日出勤もして、会社への貢献と、昇進と、自らの成長を全力で目指し続けたとしたら。
特に、課長クラスの「中間管理職」の状況はたいへんです。収入はそれほど増えないのに上に気を使い、部下に突き上げられ、休む暇もありません。日本でも、ワークライフバランスや育児休業などが言われていますが、それも、平社員まで。日本で女性管理職の割合が少ないのも、この中間管理職を会社が「働かせ放題」だからではないでしょうか。
現在の日本社会で、女性がキャリアの仕事と同時に数人の子育てをすることは不可能ではないかもしれませんが、相当の覚悟と労力とコストがかかってくるはずです。
男性が自分に代わって専業主夫をしてくれたり、完全に家事育児を折半できたり、子育てを頼める父母が近くにいたり、あるいは香港やシンガポールのように家事代行サービスをフルタイムでやってくれるメイドさんがいれば話は変わってきますが、仕事にフルコミットしてキャリアを目指しながらの「結婚・育児」の選択は、今の日本社会では至難の業であることは否めません。
「出世」か「子育て」か。残念ながら、多くの日本女性は、いまだこのレベルで足踏みをしているのが現状です。
では、非正規雇用者など低所得層はどうでしょう。年収250万円程度の男性が家庭を持ち、専業主婦と複数の子どもを養う。これも、現実的には厳しいケースです。
実際、妻も働きダブルインカムにならないことには、子どもを持つという選択ができない。となると、それ以前に「結婚」自体のハードルも高いままです。
「結婚するメリットって何だっけ?」
結局のところ、こうした根本的な問いに、現代日本人は陥っているのではないでしょうか。
「結婚=イエのため」のものとして、有無を言わさず「万人がするもの」という縛りが解けた近代社会において、昭和時代までは「結婚=生活を豊かにするため」というメリットが存在しました。