東名高速道路の「大和トンネル」(神奈川県大和市)は、渋滞が発生しやすい“名所”として知られます。渋滞を解消するための「救世主」として、側道を走行できる「付加車線」が整備されたものの、効果を発揮したとは言えません。その残念な理由を、自動車ジャーナリストが徹底考察します。(自動車ジャーナリスト 吉川賢一)
渋滞の救世主「付加車線」も
大和トンネルでは無力!?
皆さんは「付加車線」という道路をご存じでしょうか。
渋滞緩和を目的に、本線車道の側道などを整備してクルマが走行できるようにしたものです。利用時間帯の規制はないため、無理な追い越しなどをしなければ、どのようなクルマでも通行できます。融通が利くことから、渋滞緩和の「救世主」だと高評価する報道もみられます。
ただし通常の車線とは異なり、付加車線は走行できる区間が限定されています。一例を挙げると、「渋滞の名所」として知られる東名高速道路の大和トンネル付近には、2021年7月に付加車線が設置されました。その長さは「上り線約3キロ・下り線約2キロ」と限られています。
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大和トンネルとは神奈川県大和市にある、横浜町田インターチェンジ(IC)と綾瀬スマートICをつなぐトンネルです。全長はたったの280メートルですが、もともと交通量が多かったことに加え、渋滞の原因となりやすい「サグ(下り坂から上り坂に変わるポイント)」であることから、以前から常に渋滞が発生していました。
実際に運転してみると、大和トンネル付近は「丘」のような地形です。上り線では、トンネルの手前から上り勾配が始まり、トンネル内に入ると傾斜がさらに強くなっています。下り線では、トンネルの手前に下り坂があり、そこから上り坂に差し掛かっていきます。
いずれも勾配に気を付けながらトンネルに入るため、ドライバーは事故を起こさないよう減速しがちになるのでしょう。
そんな渋滞多発エリアに付加車線が設置されてから、まもなく3年が経過します。しかし実は、大和トンネル付近の渋滞はあまり解消されていません。
せっかく導入された「救世主」は、なぜ効果を発揮できていないのでしょうか――。