カレーとナン写真はイメージです Photo:PIXTA

町のカレー屋を見れば、日本人ではなく、インド、ネパールなどの人が営んでいることも、もはや珍しくなくなってきた。価格も安く、本場の味が味わえるのが大きな魅力だ。しかし、その低価格の裏には、途上国の抱える問題がある。※本稿は、室橋裕和『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』(集英社)の一部を抜粋・編集したものです。

増加したネパールやベトナム留学生
目当ては日本でのアルバイト?

 2008年、「インネパ(ネパール人経営のインドカレー屋)」界のみならず日本の在留外国人政策においてもでかい出来事があった。「留学生30万人計画」が策定されたのである。2020年までに日本で学ぶ留学生を30万人に増やそうというものだ。計画の趣旨としては「日本を世界により開かれた国とし、(中略)『グローバル戦略』を展開する一環として」と説明されている。しかし本音のところで期待したのは「留学生が卒業後も日本に定着し労働力となってくれること」だったといわれる。もちろん少子高齢化による働き手の不足があらわになってきたからだ。

 実際、卒業後どころか在学中から留学生たちはアルバイトで飲食、コンビニ、流通、工場などを中心にさまざまな業界で働き、労働力としてがっつり貢献することになった(なお在留資格「留学」は「家族滞在」同様、申請をすれば週に28時間までのアルバイトが許可されている)。

 その多くは中国人や韓国人、台湾人だったが、2011年を境にこの勢力図に変化が出てくる。きっかけは東日本大震災だ。福島第一原子力発電所のメルトダウンで放射能を恐れた外国人が、このときかなり帰国した。留学生も同様だ。それにこのころ、中国も韓国も台湾も経済発展し、日本で学びたい、将来的には働きたいという人がめっきり減っていた。留学するなら日本ではなく欧米を選ぶようになってきていたのだ。

 危機感を覚えたのは留学生が減少した日本語学校や専門学校、大学などだ。あやしくなった経営を立てなおすべく、発展した東アジアではなく経済的に立ち遅れた東南アジア、南アジアでの「営業」をさかんに行った。一説にはこのとき、日本に来れば学びながらアルバイトができることを「売り」にしていたといわれる。そのため、海外で働くことが人生の希望のようになっているネパールとベトナムから、半ばアルバイト目当ての留学生が急増した。数が増えれば、昔のように優秀な学生ばかりとは限らない。同じ留学生でも、第1世代とはずいぶん境遇も考え方も違う層が、日本に大挙してくる。