JR東海は、東海道新幹線最新車両「N700系」に於いて、平成21年3月を目処に、無線LAN接続の導入を開始すると発表した。

 最近ではノートパソコンを持って出張に出かけるビジネスパーソンが増えている。N700系ではその点を考慮し、普通車にも窓側の席の足下にコンセントを配置。また、グリーン車では各座席ごとにコンセントを配置するなど、ノートパソコンの利用をかなり意識している。

 そして無線LAN接続だ。

 このサービスが始まれば、移動中の車内でもインターネットに接続することができるようになる。データ通信速度は下りが約2Mbps、上りが約1Mbpsの予定だという。

 やや速度は遅いが、メールのチェックや通常のWebブラウジング程度ならばそれほど問題ではないだろう。

 さて、この無線LANサービスにより、ビジネスはどのように変わるだろうか?――

 新幹線と並び国内移動に使われる飛行機では、インターネットへの接続はおろか、携帯電話すら使えない。飛行機に乗っている間は、ネットワークからは遮断されてしまう環境だ。

 例えば、東京から博多へ出張する場合、飛行機ならば空港から空港まで約1時間40分。新幹線の場合は約5時間だ。

 時間だけ比べると圧倒的に飛行機のほうが早い。しかし、移動中の時間を有効活用できるとすれば、新幹線に利がある。

 最近では、ノートパソコンとインターネット回線があれば、どこでも仕事ができる場合が多い。新幹線を使えば、5時間の移動時間もオフィスや自宅で仕事をしているのとほぼ同じ状態になれるといえるのではないだろうか。

 1時間40分のあいだ仕事が止まってしまう飛行機と、移動時間を丸ごと仕事に充てることも可能になる新幹線。この差は意外と大きい。

 おそらく、JR東海が考えるN700系は「高速移動オフィス」だ。忙しいビジネスパーソンにとって、移動時間の短縮はもちろん歓迎すべきことだが、ノートパソコン1台あれば仕事の大半はこなせる現代においては、インターネット接続ができる環境であれば、長時間の移動のほうが仕事がはかどることになる。

 また、N700系では喫煙スペースも配置されており、喫煙者にとってはその点においてもかなりのアドバンテージとなる。細かいことだが、座席を回転させることもできるので、少人数でのちょっとした会議などもこなせるだろう。

 加えて、新幹線の主要駅の待合室でも無線LAN設備を整える予定になっており、それこそインターネットが移動中どこでも使える環境になる。

 移動時間すら無駄にしたくないビジネスパーソンにとっては、来年3月からのN700系は、第2、第3のオフィスになる。多忙な人ほど移動時間の長い新幹線を利用する、という逆転現象が起こるかもしれない。

(三浦一紀)