銀行サービスに乗り出す
JR東日本の狙い

 JRE BANK構想が発表されたのは2022年12月のこと。当時のプレスリリースには「本サービスは『人生に体験と経験を。』をコンセプトとし、一般的な金融機関がお客さまに提供している『資産の増加といった価値の提供』のみならず、金融資産を預けていただいたお客さまに『JR東日本グループの事業領域を活かした特典の提供』」を行うと記されている。

 銀行サービスを開始する意義、メリットを改めてJR東日本に聞くと、「一般の銀行にはない独自性の高い特典でお客さまに口座を開設していただくことで、当社グループの各サービスの入り口として接点を持つことが可能となります」と説明する。

「接点」を強調していることからも分かるように、JRE BANKは私たちがイメージする一般的な銀行業とは異なる。通常の銀行は預金を集め、資金を必要とする人や企業に融資する事業だが、JRE BANKは「銀行代理業」というビジネスモデルだ。

 銀行代理業とは銀行法第2条第14項が定める、所属銀行のもとで預金や資金の貸し付け、為替取引や住宅ローンなどの契約を代行する事業のこと。JRE BANKのサービスは、楽天銀行を所属銀行、同社の完全子会社である株式会社ビューカードを銀行代理業者として提供される。

「毎日、潤沢なキャッシュが入って来る鉄道事業者は銀行業に参入して資産を運用すればよいのではないか」との指摘は古くからあり、実際、戦前には鉄道と銀行の両方を傘下に収める財閥も珍しくなかった。だがJRE BANKはあくまで銀行代理業であり、楽天銀行の1支店との扱いなので、預金の管理・運用は楽天銀行が行う。

 では、JR東日本が手厚い特典を用意してまで銀行代理業に参入するメリットは何なのか。同社は「当社グループのさまざまなサービスをおトクにご利用いただくことでグループ内のサービスの認知度やご利用の拡大を図っていきたい」と、グループ全体への波及効果を強調する。