料理をする男性写真はイメージです Photo:PIXTA

現在は、皆婚社会ではなくなり、多様な生き方が見られるようになった。ただ、東京に住むシングルにインタビューしたところ、自由を謳歌しつつも彼らは病気や老後を不安視している。彼らシングルの本音に迫る。本稿は宮本みち子・大江守之編著 丸山洋平・松本奈何・酒井計史著『東京ミドル期シングルの衝撃 「ひとり」社会のゆくえ』(東洋経済新報社)を一部抜粋・編集したものです。

シングルという利点を最大に生かし
自由に生活を楽しめる場所=東京

 シングルたちの中には、趣味の世界を楽しみ、新しい場所に出かけ、知り合いもできる、というように、活発な社会関係を持つ人が多いようにみえます。むしろ、シングルである利点、自由であることを活かして誰に遠慮することなく様々な場所に出かけていく、そしてその拠点としての便利な東京に住む、という選択をしているのだ、という様子が見受けられます。

 彼らはシングルである、という利点を最大限に活かしながら、自由に生活を楽しもうとしています。そんな彼らのライフスタイルには東京という大都会、つまり便利な交通網や、簡単にアクセスできるお店が多い場所で暮らすことは重要です。

「そうですね、やっぱり交通の便だったり生活しやすさっていうと漠然としてますけれども、別に毎日毎日デパート行きたいわけじゃないんだけれども、例えば家の近所だってドラッグストアみたいな5、6軒あったり、でも地方に行くと車で10分行かないとなかったりしますけれども、そういうものが当たり前にそろっている。例えば家の近くにスーパーも5、6軒あったりして、別に5、6軒なくてもいいんだけれども、いつだって自分の好きなところを選べる。

 電車でちょっとどっか行きたいと思ったら電車は常に5分に1本来るみたいな、地方に行くと1時間待たないと電車が来ないみたいな。そういう違いですね。もうやっぱり利便性が圧倒的に高いです」(Sさん、女性、40代前半)

「車を使わずに、車、別に持ってるわけじゃないけど、車使わずにどこでも行けるっていうのはやっぱり23区だけだと思う。あと、同じ1つのとこ住んでても、私鉄、JR含めていろいろありますから、1つの場所から。だから、結構どこ行くにも便利ですよね、早くて」 (Jさん、男性、50代後半)

シングルにとってのサードプレイス
「相手の内情は聞かない」という紳士協定も

 アメリカのオルデンバーグという社会学者が提唱した「サードプレイス」という概念があります。サードプレイスとは人々が自宅(ファーストプレイス)や仕事の場所(セカンドプレイス)以外で、社会的なつながりを築き、リラックスや交流を楽しむ場を指します。

 このサードプレイスとして代表的なものがコーヒーショップであったり、図書館、公園などです。一方でミドル期シングルたちが語っているのはそこにとどまらない、地域を超えた場所、例えばツーリングに出かける先、コンサート会場やスポーツ観戦の場所など地域コミュニティには存在しない「イベント的」サードプレイスです。