読み進めると、

「悪質な不正事案に対しては、刑事告訴・告発を行う等、福祉事務所において厳正な対応が必要である」

 とある。そして、

「(国は)告発の目安となる基準の策定について検討する必要がある」

 という。

 では、どのような不正受給が、告発にふさわしいのであろうか? 70ページの表によれば、平成22年、告発件数は52件であった。概ね、各都道府県あたり1件程度の、極めて出現頻度の低い、しかしながら1件あたりの金額が多大なケースが問題になっていると考えてよいであろう。例を挙げるならば、

「数千万円単位の資産隠し」
 「数億円単位にのぼる医療扶助の不正利用」
 「5つの異なる自治体で生活保護を申請し、生活保護費を5重に受け取っていた」
 「暴力団による組織的不正受給」

 といった、あまりにも出現頻度が低く、かつ金額や報道時のインパクトが大きい事例と考えられる。

 このような事例では、過去にも刑事告訴を含めて告発が行われてきており、現在の生活保護法や六法によるペナルティで充分であると筆者は考えている。

 資料のこの章では、暴力団員による生活保護受給に対しても、厳しく対応することが示されている。つまり、どう読んでも、金額や事例のインパクトが非常に大きな不正受給・暴力団員による生活保護受給以外は、問題とされていないのである。

 このような少数の事例に対して、「制度の信頼にかかわる」として対策を強化するのは、筆者には「大げさ」に見える。もしかすると、主目的は「適正化」でもなんでもなく、資料73ページの「退職した警察OBを福祉事務所内に配置」、すなわち、警察OBの再就職先確保なのかもしれないが。

「仕事がない」「求められる人材でない」を
無視した就労強化の行方は?

 古川氏による説明で強調されていた事柄の1つに、就労支援の強化がある。資料では、9ページ・17ページにあたる。また、就労支援の強化については、23ページ~31ページに、「2 自立・就労支援の充実・強化、そのための体制整備として」と一節が割かれている。そのためにもケースワーカーの増員を図ることが、29ページに示されている。