遥か彼方の銀河を「双眼鏡だけ」で探すようなもの

 検定力の低い研究は、はるかかなたの銀河を双眼鏡だけで探すようなものだ。探しているものが確かにそこにあるとしても、見える可能性は基本的にない。

残念ながら、この点を多くの科学者が理解していないようだ。特にマクラウドが取り上げた動物研究の分野は、その傾向が強い。2013年に発表されたレビューは、マウスが迷路を進む能力の性差に関する研究など、さまざまな神経科学の研究に注目している。たとえば、迷路を進む能力について、一般に期待される性差を確認するために必要な検定力を得るには134匹のマウスが必要である。「男性は女性より体重が重い」という効果より、はるかに微妙な効果を確認しようとしているのだ。しかし、レビューが調べた平均的な研究のサンプルは、わずか22匹だった。

これは迷路をさまようマウスだけでなく、神経科学の大半の分野にあてはまる問題でもあるようだ。また、複数の大規模なレビューから、医療試験や生物医学研究、経済学、脳機能イメージング、看護研究、行動生態学、そして──なんということか──心理学でも、検定力が足りない研究が蔓延していることが明らかになっている。

(本稿は、『Science Fictions あなたが知らない科学の真実』の一部を抜粋・編集したものです)