労務不能かどうかの判定は
医師の診断が必要

 前述のとおり、「労務不能の状態」とは、病気やケガで仕事に就くことができない状態のこと。入院していなくても、仕事ができない状態であれば、自宅療養も給付の対象になっている。ただし、労務不能かどうかは、医師の診断をもとにそれまでの仕事内容などを考慮して、健康保険組合が判定することになっている。

 医師の診断書が必要なので、「体調が悪い」「仕事ができない」という労働者の自己申告だけでは傷病手当金は受給できない。また、患者が受診している主治医だけではなく、勤務先が契約している産業医との面談が必要なケースもある。

 労働基準法で定められた年次有給休暇は、労働者が自由に取得できる休暇で、取得理由も問われることはない。だが、健康保険の傷病手当金は、労働者の意思だけで自由にとれるものではないので注意しよう。

 傷病手当金は病気やケガをして働くことができない人が、生活費の心配をしないで療養に専念するために設けられている制度だ。原則的に、休業中にアルバイトなどで、その他の仕事をすることは許されていない。

 受給中にその他の労働していることが見つかると、「働けるのに、仮病をつかって不正受給した」とみなされ、傷病手当金の返還を求められたり、解雇されたりする可能性もある。悪質なケースは刑事罰に問われることもあるので注意しよう。