支給期間は通算1年6カ月
支給額は月収の2/3が目安

 では、傷病手当金は、いくらくらい、どれくらいの期間もらえるのだろうか。

●1日あたりの支給額
 支給開始日以前12カ月間の各標準報酬月額の平均÷30日×2/3

 傷病手当金を計算する時は、まず、支給開始日(初めて傷病手当金が支払われた日)のある月から数えて、過去12カ月間の各月の標準報酬月額(社会保険料や給付金等を計算するもとになる報酬額)を平均する。この金額を30日で割って、2/3をかけたものが1日あたりの支給額だ。

 ただし、新社会人が就職後すぐに仕事を休むと、支給開始日までの就労期間は12カ月に満たない。こうしたケースでは、次のいずれか低いほうの金額をもとに支給額を決定する。

(A) 支給開始日のある月を含めた直近の継続した各月の標準報酬月額の平均
(B) 全加入者の標準報酬月額の平均値(協会けんぽの場合は30万円)

 たとえば、入社してからの標準報酬月額の平均が24万円だった場合は、(B)の全加入者の平均値30万円よりも、(A)の自分の標準報酬月額の平均のほうが低い。そのため、傷病手当金は(A)の24万円をもとに計算する。

 1日あたりの支給額は、【24万円÷30日×2/3=約5300円】となる(ただし、ここから各種社会保険料などが差し引かれるので、手取りはさらに低くなる)。

●支給期間
 支給開始日から通算して1年6カ月

 2022年1月、制度改正が行われて、傷病手当金の支給期間が「支給開始日から通算して1年6カ月」に見直された。

 支給要件の(4)で説明したように、傷病手当金がもらうためには「勤務先から給与が支払われていないこと」が条件となっている。そのため、支給開始後に病状が良くなり、復職して給与をもらうようになると傷病手当金は支給停止となる。

 制度改正前の支給期間は、「支給開始日から起算して1年6カ月」だったので、暦のうえで1年6カ月たった時点で受給できる権利は消滅。その間に復職して給与をもらっている期間があると、その分は支給停止となり、まるまる1年6カ月分がもらえるわけではなかった。

 この間に病気やケガが完治すればいいが、がんやメンタルヘルスのように治療が長引く疾患もある。いったん症状が落ち着いて職場復帰しても、再び、休職せざるを得ないケースもあるが、支給開始日から1年6カ月たつと傷病手当金は打ち切られていた。

 そこで、労働者が病気やケガの治療に専念できる期間を延ばし、労働市場からドロップアウトする人をできるだけ減らすために、「支給開始日から通算して1年6カ月」に見直されたのだ。そのため、現在は、ひとつの病気やケガでもらえる傷病手当金は最高で1年6カ月分となっており、療養が長引いても公的保障で生活費をカバーできる期間が長くなっている。