輸送量がコロナ前の水準まで
回復しなければ問題はないが…

 現状の輸送状況で5両化して問題ないのか、東武は「150%以下に収まる計算」と説明するが多くを語らない。平均混雑率が150%を超えるには、コロナ前とほぼ同等まで利用が回復する必要があるため、確かにその点では問題ないのだろうが、コロナ以前は混雑率120~130%だった路線の基準値としては疑問が残る。

 また、野田線は各駅の階段や改札の配置の関係上、先頭車両に利用が集中する傾向があり、平均混雑率では局所的な混雑を計りにくい。当然、社内では外部非公表データや現業からの聞き取りをもとに計画を立てているのだろう。そうであれば堂々と「問題ない」と判断した根拠や条件を明らかにしてほしい。もし混雑率の目標を150%にまで後退させなければならない理由があるのだとしたら、丁寧に説明すべきだろう。

 野田線沿線で生まれ育ち、今も暮らしている筆者は、仕事を差し引いても野田線にそれなりの愛着を感じている。フリーランスになって電車通勤こそしなくなったが、日常的に利用する現役のユーザーでもある。

 同時に「アーバンパークライン」という(ご立派ながら少々恥ずかしい)愛称を付与し、ダイヤ、車両、駅など各方面で改良・改善を進める東武が、野田線を軽視していないことも重々承知である。

 野田線では柏~船橋間の複線化工事完了や、野田市内の連続立体交差化工事など千葉県内の動きが目立ったが、ようやく埼玉県内の刷新も動き出した。

 今年3月31日に筆者最寄りの七里駅の橋上化工事が完了し、待望の北口が使用開始。伊勢崎線とのジャンクションである春日部駅では高架化工事が本格化しており、まもなく仮ホームへの切り替えが始まる。

 また4月22日にはさいたま市が、野田線大宮駅の大規模改良を含む「大宮グランドセントラルステーション構想」の検討状況を公表し、設計や工事の詳細について東武鉄道と協議中であることが明かされた。

 東京都心30キロ圏は人口減少社会においても一定期間、人口規模を維持すると予測されており、その境界線上を走る野田線にはまだ発展の余地が多く残されている。東武の期待の大きさは、「ソライエ」ブランドで自ら沿線開発を推進していることからも明らかだ。

 沿線から愛される存在であり続けるために、東武には利用者、自治体とのコミュニケーションの重要性を、今一度認識してほしい。