生保・損保・代理店の正念場#24Photo:anusorn nakdee/gettyimages

生命保険業界のガリバー、日本生命保険が介護事業などを手掛けるニチイホールディングスを、第一生命ホールディングスが福利厚生代行のベネフィット・ワンを買収。「非保険領域」という言葉がにわかに脚光を浴びている。特集『生保・損保・代理店の正念場』(全31回)の#24では、その実情に迫る。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

日本生命のニチイ買収
エース級人材を投入

 今年3月8日、日本生命保険の社内でどよめきが起こった。この日公表された役員人事で、佐藤和夫取締役常務執行役員が専務に昇進したと同時に経営企画部門を離れ、ライフサポート事業部の担当役員になったからだ。

「次期社長候補の筆頭格で、日生で一番忙しい人」(日生幹部)と評される佐藤氏が担当するこの部署こそが、日生が約2100億円で買収した、ニチイ学館を傘下に持つニチイホールディングスを担当する部署に他ならない。

 佐藤氏が自らニチイ買収を決めたとはいえ、日生きってのエース級人材をこの買収案件に投じたわけで、日生の並々ならぬ力の入れ具合が見て取れる。

 ではなぜ、日生が介護や医療事務、保育の事業を手掛けるニチイを買収するのか。ましてや、保険事業とは全く異なる、業界でいうところの「非保険領域」への進出である。

 次ページでは、日生のニチイ買収や、第一生命ホールディングスによるベネフィット・ワンの買収など大型買収案件の背景や狙いに加え、明治安田生命保険と住友生命保険の非保険領域への取り組みを考察していく。