ペシャンコ広告のコンセプトは
「破壊が生み出す進化」かもしれない
この問題を理解するキーワードは「記号論」です。
ものすごく簡単に説明しましょう。
私たちは普段は何かを指す言葉について漠然と「ただの物の名前を表している」言葉だと思っています。トランペットとかテレビとか人形といった言葉の話です。
しかし「より深く考えてみるとこういったひとつひとつの言葉には記号としての意味がある」というのが記号論の発見です。例えばトランペットという言葉にはあの金属でできた楽器を指す意味以外にも、ジャズのシンボルとしての意味があります。
そしてそういった言葉の持つ意味は、社会の価値観が込められています。言い換えると社会ごとに言葉の意味は異なります。それは日本社会という広い単位だったり、ジャズ界隈といった狭い単位だったりさまざまです。そして“トランペットを潰す”という行為について「物が破壊される」という以外の意味を見出す人々が集まる社会が存在します。
記号としての言葉の意味は社会ごとに異なります。たとえば破壊という言葉を考えてみます。日本社会では破壊という言葉は極めてネガティブな意味を持っていますが、アメリカでは必ずしもそうではありません。破壊をすることで新たなイノベーションが発展する。破壊をすることでより近代的な新しいものが生まれるといった具合に、破壊は進化を意味する言葉だったりするのです。
アップル社のティム・クックCEOによれば今回のiPadのコンセプトは「破壊」だと言います。これまでのiPadのコンセプトを破壊するまったく新たな存在だという意味でしょうか。
そこで、そのブランドコンセプトを彼らの社会の記号で忠実に表現したのが今回の動画かもしれないということに気づかされます。
巨大なプレス機の上に山のように積まれた古い時代のクリエイティブのための道具たち。これらは社会によっては記号として意味するものは「古い道具」であり「消費され捨てられる物」だとします。古い物が壊されるから新しいものが生まれる。そういったコンセプトかもしれません。