在宅調剤のはしご外しで
“弱者の戦略”が的中

C 「これをやれば地域支援体制加算付けますよ」「後発薬の使用量が80%を超えればプラスにしますよ」など、報酬改定の内容には政策誘導がつきものではあるんですが、これまではもう少し柔らかく、優しく誘導してくれていた。

 例えば後発薬の割合は、65%→70%→75%と少しずつ段階的に条件を厳しくしていく感じでしたが、今回は政策誘導の側面が明確に打ち出されている。地域支援体制加算の減算分を埋めるように、他の直接的な内容の項目で加算をしていますよね。

 典型的なのが新設された「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)推進体制整備加算」(オンラインでの資格確認により取得した診療情報、薬剤情報等を保険調剤に実際に活用できる体制を有するとともに、電子処方箋および電子カルテ情報共有サービスを導入するなど、質の高い医療を提供するため医療DXに対応する体制を評価するもの)。地域支援体制加算を取るための施設基準として緊急避妊薬の要件(緊急避妊薬の備蓄とともに、当該医薬品を必要とする者に対する相談について適切に対応し、調剤を行う体制を整備していること)が盛り込まれたのも、もはや「国が要求する条件を満たさないと、これまでのような点数は取れませんよ」という強烈な意志を感じます。

B 地域支援体制加算がいきなりマイナス改定になるなんて、本当に想定外。在宅の推進自体、何より国が旗を振ってきたわけで。

C 地域支援体制加算は、財務省との兼ね合いもあって今回の形になったといううわさも聞きましたけど。

A うちは元々、地域支援体制加算は算定をしないというスタンスでやってきたんですよ。改定ごとに振り回されてしまうから。売り上げとしての影響は非常に大きいけれど、当初から「これはちょっと振り回される幅が結構大きそうだな」と思ってそうしてきました。業界全体としてはもちろん大きなトピックスではあるのですが、うちの場合は、逆にダメージはないんですよ。

C 地域支援体制加算に依存してなかったとすると、今回の改定はむしろプラスですかね。算定要件が増えたという意味では。

A 地域支援体制加算が取れなくなった他の薬局がつぶれていって、うちみたいな激安薬局が生き残れるかなという。本当に弱者の戦略ですけど(笑)。

B 戦略的には全然ありですよね。

C やっぱり、地域支援体制加算のハードルも年々上がっていますし、満たさなきゃいけない要件が結構難しくなってくると「そこまでしてやらないといけないのかな」みたいに思うことも多々あるんですよね。

要件を満たさせるつもりはない?
小児特定加算は“無理ゲー”

A 小児特定加算(児童福祉法に規定する障がい児である患者に係る調剤に際して、必要な情報等を直接当該患者または家族などに確認した上で、当該患者またはその家族に対し、服用に関して必要な指導を行い、かつ、当該指導の内容などを手帳に記載した場合に算定できる加算)? あんなの無理ゲーでしょって(笑)。要件を満たさせるつもりはないんじゃないかと思いますよ。

B そもそも地域に要件を満たす子どもがいなければ算定できないし、「病気のお子さんいませんか?」なんて口が裂けても聞けませんからね。

C それ(小児特定加算を満たす患者)も、すでに結局取り合いみたいになっていると聞きますよ。少し前に問題になったような、要件を満たす患者がいる施設に対して「うちにください」とか「やらせてもらえるんだったらお金払いますんで」みたいな営業をかけ始める薬局がまた増えてくるのかなという気もします。あそこまでハードルが高いと。

A 国も本当は調剤の点数をがっつり下げたかったんだとは思うんですけど、賃上げやインフレなどの関係で、そこまでのことができなかったんですよね、きっと。本当はもっと削りたかったはず。今回は医科の方がもっとエグいことになっていますから。

C 医科は、かなり削られましたよね。

A それに比べれば、薬局はまだマシな方です。

B 元々低かったから、(マイナス改定に)慣れているというのもあるかもしれない(笑)。

C また今年も減らされたかっていう(笑)。想定内。

A これくらいで済んでよかったわ、みたいな。ここにいる先生方は、みんな薬局バブルの後に、薬局経営をやり始めているので、なおのこと、マイナス改定に対しては防御力が上がっているんだと思います。