諸外国の研究結果とは異なる 

 その結果、死亡リスク(持ち家との比較)は、民間の賃貸住宅で1.45倍(95%信頼区間1.34~1.58)、公的な賃貸住宅で1.17倍(同1.07~1.27)高かった。すなわち、公的な賃貸住宅に住む人は、民間の賃貸住宅に住む人と比べて、9年間の死亡リスクが28%低いことが明らかとなった。

 以上のように、民間の賃貸住宅と比べて、公的な賃貸住宅に住む高齢者の方が死亡リスクは有意に低いという結果が得られたが、これは諸外国の研究結果とは異なるものだったという。

 この点について古賀氏らは、JAGESの別調査から、公的な賃貸住宅の中ではUR都市機構が開発した大規模な団地に住む人が多いと考えられることに言及。このような住宅はコミュニティの育成を目指した「近隣住区論」をベースに、学校などの公共施設、商店、緑地や公園、オープンスペースなど、周辺環境が計画的に配置されており、近隣環境が健康行動に影響を及ぼしたのではないかと説明する。

 その上で古賀氏らは、「公的な賃貸住宅で死亡リスクが低い要因を明らかにすることは、健康長寿社会の実現に向けた住宅政策や街づくりの検討に役立つ可能性がある」と話す。また、今回の研究では考慮されていない要因(対象者の資産、住宅の改修歴、エアコンの有無など)を挙げ、住環境と死亡リスクの関連やそのメカニズムについて、「今後も引き続き検証したい」としている。(HealthDay News 2024年5月13日)

Abstract/Full Text

https://www.nature.com/articles/s41598-024-58244-y

Press Release

https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/news/report/page_00318.html

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