読み手の「知りたい」を意識すると、「伝わる」

 こうした「上手い文章」を書くコツは、編集者としての経験が大いに生かされていると話す。企画を立て、原稿やレイアウトを作り、誌面にしていく。その一連の編集業務で意識し、判断基準になるのが、読者の視点だという。

「編集のスキルを一口に言うと、『読者の視点を持つ』ということです。この誌面を読む人は、何を知りたくて、どんなことを面白がってくれるのか。それを判断基準として、誌面を作成していきます。

 例えば、とある飲食店の大ファンが書いた文章は勢いがあり魅力的ですが、肝心な値段や予約の不可、住所の記載がないことがあります。読者を意識すると、そうした重要な情報の見落としが減ります」

 また、メディアに取り上げてもらうためのプレスリリースについても、高田さんは「もっと読み手の視点を意識することが重要」と話す。

「大切なのは、企業が伝えたいことではなく、読み手が『知りたい』ことを書くことです。それを知るためには、顧客をヒアリングしたりアンケートをとるのが有効です。

 文章の書き方から離れるかもしれませんが、リリースはサービスの開始前に送られるのが普通ですよね?でも、その後どうなったのか?というのが気になるサービスもある。言わば、『後追いリリース』みたいな企画があってもいい。読者の視点から物事を考えると、リリース文章の印象も送付の仕方もガラッと変わると思うんです」

等身大の情報が好感を得る

 紙媒体ではなく、WEBが主流になった今、高田さんは文章を書く時に必須となる「編集スキル」について教えてくれた。そのひとつが、不都合な情報を隠してしまうリスクについてだ。

「WEBの時代になると、企業にとって知られたくない事実もいつかはバレてしまう。だったら、飾らずに等身大で正直に書くこと。隠すよりも、その誠実な姿勢の方が、圧倒的に好感を得られるでしょう。情報をうまく整理しまとめる文章スキルに、そうした時代の潮流を敏感に察知する編集スキルを持つことが、今後の企業の情報発信には不可欠だと思います」

 そして最後に、今まさにビジネスシーンにおいて、文章作成に悩む「社会人1年生」に向けて、次のようなアドバイスをしてくれた。

「まずは、頭の中にある言葉や情報をアウトプットして書き出す。文章でも箇条書きでもいい。目で見て確認することで、圧倒的に情報を整理できます。何より、誰かに相談するときに、言葉でやりとりするより、具体的な意見をもらえるはずです。だから、悶々と悩むよりも書き出してみることです。それが、次のステップに進む大切な一歩になると思いますよ」

「伝わる文章」とは、文章が上手い下手ではなく、読み手が知りたい情報をしっかりと盛り込むこと。文章術の重要度が増す今、そうした編集スキルを磨くことが仕事で成果を出す大切な一手になるだろう。