時代の変化に追いつくための柔軟性を
要請するポストフォーディズム

 ポストフォーディズムとは「ポスト=後」がついていることから分かるように、フォーディズムの後に来たとされる生産の体制です。時代としては1970年代から80年代くらいが転換点だったと考えられますが、フォーディズムにおけるような画一的な大量生産・大量消費では十分な利潤が得られず、資本主義の成長が鈍磨していきます。1970年代には「イギリス病」や「成長の限界」(これは環境問題も含んだ話ですが)といった形で、フォーディズムを基礎とした高度成長の資本主義の限界が言われるようになりました。

 そのような状況に対してはさまざまな応答がなされました。例えば経済の金融化がそうですし、この後説明する新自由主義政策もそうです。そしてその一つがポストフォーディズムだったわけです。

 ポストフォーディズムは、文字通り、生産体制の名前です。フォーディズムが大量生産・大量消費の体制だったなら、ポストフォーディズムの特徴は、「オンデマンド生産」や「リーン生産体制」ともいわれるような、市場の需要に柔軟に対応する形に調整された生産です。

 例えばカメラなどを考えてみましょう。若い読者には想像もつかないと思いますが、私が子供だったころ(1980年代あたり)にはまだ、カメラのモデルチェンジの頻度は低く、一度作って売り出せば10年くらい同じモデルを平気で売っていました。ですが、今やデジタルカメラは1年半くらいでモデルチェンジします。新たなモデルに付加価値をつけて売っていかないと利潤が出せないような構造になっているのでしょう。

 このように、ポストフォーディズムでは柔軟な生産の調整が鍵になってきます。それと同時に、今のカメラの例は当てはまりませんが、ポストフォーディズムにおいては物質的生産から非物質的生産へと重点が移ったともいわれます。非物質的生産というのは形容矛盾に聞こえるかもしれませんが、それが指しているのは、情報産業、知識産業、そして感情労働(これは重要ですが追って明らかにしていきます)へと重点が移ったということです。簡単に言ってしまえば、第2次産業から第3次産業へ、さらには第4次産業へと重点が移ったということです。