実質GDP成長率なら、日本がドイツより上

生島 日本ではドイツほど物価が上がらなかったから、名目GDPもたいして上がらなかった。しかもドルベースで比較しているから、円安の日本はさらに低く出てしまう、ということですね?

岩本 そうです。IMFの「世界経済見通し」の報告書は海外のファンドマネージャーなどの間でもそれなりにチェックされているデータでもありますので、毎回その内容を私自身も気にしているのですが、実は毎回報告書の前面に出てくるのは名目GDPではなく、物価変動の影響を受けない実質GDPです。

 IMFは日本語版のHPを開設しており、そちらで最新の報告書の内容も確認することができるのですが、HP上でもまず出てくるのは実質GDPです。

 そして、データの数値そのものもそうですが、それに基づいたIMFによる報告書の要旨や総括も実質GDPの数字がベースとなっています。逆に、IMFのサイトからわざわざ名目GDPを探すほうが手間がかかるのです。

生島 やっぱり何か別の目的がある?

岩本 そのあたりに違和感が残ります。ここで実際の報告書を見てみたいと思います。

 2023年10月の「世界経済見通し」では、2022年、2023年、2024年と、毎回本年とその前後1年ずつ、計3年分の各国の実質GDP成長率の内訳が公表されます。図表1-1の3年分を合算すると日本は4.0%(22年1.0%、23年2.0%、24年1.0%)となり、ドイツは2.2%(22年1.8%、23年-0.5%、24年0.9%)となります。

 つまり、3年分の実質GDP成長率で見るなら日本のほうがドイツより倍近く上となります。

日本人だけ後ろ向きな気持にさせられている?

生島 へぇ、ドイツより日本のほうが成長率が高いんだ?

岩本 はい。こちらのデータから遡(さかのぼ)ること半年前、2023年4月の「世界経済見通し」が公表されました(図表1-2)。その際、先進国全体の実質GDP成長率については22年の2.7%から23年は1.3%へと半減との予想がなされていました。そして先進各国の内訳を見ると、22年に比べて23年は軒並み実質GDP成長率が低下しており、くだんのドイツに至っては22年から23年は1.8%から-0.1%へと低下していました。