岩本 国際通貨基金(IMF)による四半期に一度の報告書「世界経済見通し」の2023年10月版が公表された際には、一斉に「日本のGDPがドイツに抜かれ世界第4位に転落」との報道がなされました。日本経済の長期的低迷を懸念する声があるのはまだしも、国際社会での信用問題にまで及ぶとするような声まであがっていたかと思います。

 それだけショッキングな内容というのはよくわかるのですが、私個人としてはこの報道に関しては、控えめに申し上げて、違和感を持ったというのが正直なところです。

生島 日本経済の実態を正しく反映してないんじゃないか、ということですね。

岩本 はい。少なくとも現状認識がIMFの主旨とも違うのでは?との印象を持ちました。まずは報道された具体的な数字の確認ですが、23年の名目GDP(見込み)について、日本は前年比0.2%減の4兆2308億ドル(633兆円)となるのに対して、ドイツは前年比8.4%増の4兆4298億ドル(663兆円)になるというものでした。

 ちなみに、1位の米国は26兆9496億ドル(4032兆円)、2位中国は17兆7009億ドル(2648兆円)ですから、3位・4位の数字とはずいぶんと差があります。

 GDPの考え方としては各国が生み出した付加価値の総額、経済の大きさを表します。1位米国(2021年、3億3190万人)もそうですが、人口の多い国のGDPは大きな数字が出やすくなります。

中国に抜かれることとドイツに抜かれることの違い

生島 アメリカは人口が日本の3倍近く。中国にいたっては日本の10倍以上!

岩本 日本は米国に次ぐ世界第2位の地位を実に42年間維持してきたのですが、それを中国へと譲ったのは2010年のことでした。

 中国に追い抜かれた2010年当時のことを思い出すと、中国と日本の人口を比べれば10倍以上。追い越されたとしてもGDPが国全体の総額である以上致し方ない、といった雰囲気ではなかったでしょうか。

生島 中国は勢いもありましたし、人口も日本とはケタ違いですからね。