前年度の売り上げを超えることは企業の成長にとって不可欠である。そのために従業員へ過大なノルマを課す企業は少なくない。だが、大手ファミレスチェーンのサイゼリヤは店舗ごとのノルマを設けていないという。では、サイゼリヤはいかにして成長を続けているのか?それを読み解くキーワードは「人時生産性」にあった。※本稿は、正垣泰彦『サイゼリヤの法則 なぜ「自分中心」をやめると、ビジネスも人生もうまくいくのか?』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。
仕事をシンプルにすることが
顧客と従業員の幸せにつながる
個人でも組織でも、生産性を上げるためには科学の視点が必要です。
ご存じの通り外食業は、長らく「生産性が低い」とされてきた産業です。
このままでは、お客様も従業員も幸せにできないという危機感から、「外食業の常識」にとらわれない、シンプルで無駄のないオペレーションに改善し続けています。
あなたは、自分の仕事の進め方を「科学」したことはありますか?
数学の問題を解くように、「最短最小の労力」で「最高の価値」を提供できる最適解を、ぜひ探してみてください。
サイゼリヤは、インダストリアル・エンジニアリング(IE)という手法によって、製造業の現場と同じようにあらゆる作業を科学し、合理化しています。
IEとは、工程管理技術の1つです。動作や運搬などの作業工程において、どれくらい時間がかかるのかを測定・分析し、ムリ・ムラ・ムダを省いていくというもの。
サイゼリヤの実験店では、接客や調理など作業の全工程を一つひとつ撮影し、作業を秒刻みの動作に分解・計測して、コンマゼロ秒単位で改善し続けています。
その結果から導き出された手順の最適解、つまり「道具」「具体的な動作」「求める結果」「所要時間」を標準化していくわけです。
誰でもできるくらいに仕事をシンプルにしていくと、より多くの店長を育てることができます。そのとき、初めて店舗数をらくに増やすこと(マスストアーズオペレーション)が可能になっていくのです。
テーブル清掃は布巾を
4往復させるとちょうどいい
こうして標準化された作業を、マニュアルによって徹底していくことを「完全作業化」と言います。
たとえば、「テーブルを拭く」という作業は、「布巾をテーブル上で4往復させると、テーブルがムラなくきれいになり、これには3秒かかる」と定めたとしましょう。4往復させると、ちょうど端から端までムダなく拭けるのです。3秒より速いと雑になりますし、遅いと時間をかけ過ぎてしまいます。
これなら迷いませんし、作業が完了した基準や求める結果も明快です。
もし作業が標準化されていなければ、その作業をする人が迷ってしまいます。