「テーブルをきれいに拭いてください」とお願いしたときに、1分かけて拭く人も出てくるかもしれません。これでは時間をかけすぎですし、必要以上にテーブルをきれいにしてもお客様が喜ぶとも思えません。

 このように、「具体的な動作」「所要時間」「求める結果」が可視化されると、仕事量を見積もることができるようになります。

 これに加えて、過去の売上推移から予測される来店客数がわかれば、1日あたりの必要な仕事量が算数の計算で導き出せるようになるのです。

 ここでようやく、人員の稼働計画の話に入ることができるようになります。

 もちろん、基本は最少の人員で回すこと。サイゼリヤ店舗の人員は、業界平均と比べて、だいぶ少なく抑えてあります。

 少ない人員でお店を回せれば、人件費を抑えられるので、料理を安く提供できるようになります。皆さんに、より幸せになっていただくことができるのです。

 大きくない店舗であれば、ピークタイムであっても、ホールは1人で回せます。アルバイト2人がキッチンにいれば、1日2000皿を提供することも可能です。

余剰の人員は無秩序を生み
やるべき仕事を見失わせる

 ですが、もう1つ大切なポイントがあります。

 それは秩序という観点です。一番安定していて、迷いなく、調和して仕事ができる人員の稼働計画とは、どのようなものでしょうか?

 人員配置で一番良くないのは何かというと、人が多すぎることです。

 たとえば3人で回る仕事に、10人を配置すると、どうなると思いますか?

 職場は無秩序状態に陥ります。

 必ずと言っていいほど「余計なこと」をする人が出てくるのです。

「絶対やるべきこと」を別の人がやっていると、手持ち無沙汰になります。サボっていると思われたくないから、何か仕事をしようとしますよね。むしろサボってくれたほうがいいのですが……。

 もしくは、「絶対やるべきこと」を先延ばしにします。先に終わらせてしまうと、仕事がなくなってしまうのです。すると、どうなるでしょうか?

「絶対やるべきこと」が手つかずのままに残ってしまうのです。

 そして「やったほうがいいこと」をやり始め、ついには「やらないほうがいいこと」「絶対にやってはいけないこと」まで手を出してしまうのです。

「やるべきこと」に没頭するから
最高の仕事が出来る

 エントロピー増大の法則により、こうして場が乱れ、秩序が失われると、予期せぬ問題や事故が起こり出します。機械の破損や、お客様からのクレームなどです。

 その後処理に追われることが「本来の仕事である」と勘違いする人も出てきます。結果、「絶対やるべきこと」に向かう求心力が急速に低下し、生産性が落ちるというわけです。