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人生に「あのときこうしておけば良かった」と後悔する日は少なからずあるだろう。それによってかいた恥も、もう消せるハズもないのに悩み続けた経験も誰しもあるはずだ。そんな恥と後悔を引きずり続けている方にそっと寄り添う作家・王谷晶氏のエッセイを1つオススメしよう。読み終える頃には悩みがほんの少し楽になっているはずだ。※本稿は、王谷晶『40歳だけど大人になりたい』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。

「あのときこうしていたら……」
恥と後悔は売るほどある

 恥の多い人生をおくってまいりました。というか、そうじゃない人はいないだろう。みんな大なり小なり恥にまみれた人生を送っているはずだ。そうだよね。そうであってほしい。

 42年間ぶん、後悔することはもちろん売るほどある。時を経てもはやどうでもよくなったものもあれば、思い出すたびに新鮮に胃が痛くなるようなものもある。自分の選択の誤りだったとはっきり分かるものもあれば、自分にはどうしようもできなかったものもある。

 いつまでも生傷のように痛み続けるものは、やっぱり自分のせいだと分かっているものだ。あのときもう少しちゃんと考えていたら、もうちょっと早く行動していたら、言葉をひとつ変えていたら。何かを違えていたら結果が確実に変わっていたと分かっているものほど、深く後悔する。でも当然、いくら悔やんでももうどうしようもない。何をどうしても時間だけは巻き戻せない。分かっているのに、ときどき無駄に思い出しては悶絶するのを繰り返す。

 余談だけど、そういう思い出すのも辛い後悔がふいに頭の中に浮かび上がってきてしまったときって、とっさに「おまじない」のようなことをしてしまいませんか。魔除けというか、その思い出した後悔のことを頭から追いやるために。私はほぼ無意識に「痛っ」と声に出して言ってしまう。こんなことするの自分だけかなと思ってたけど、前に飲みの席で「恥ずかしい過去を急に思い出してしまったときは即座に自分で自分の腕にしっぺをする」というエピソードを披露していた人がいて、似たような人がいる......とちょっと嬉しくなった。

「過去に戻ってやり直したい」は
誰しも一度は思うこと

 フィクションの世界で、タイムマシンものやタイムリープものが手を替え品を替えいつの時代も生み出され続けているのは、人は誰しも1つや2つは人生に後悔を抱えていて、それを「なんとかしたい(したかった)」という気持ちを持っているからだと思う。過去に戻ってやり直したい、というのは、たぶん普遍的な欲望なのだ。1回もそういうことを考えたことがない、という人はほぼいないと思う。

 でもそういう「過去に戻ってやり直す」系の物語って、たとえハッピーエンドでも、たいていちょっとほろ苦かったり教訓めいたオチがついていたりと「やっぱり過去をやり直すなんてできないし、できたとしてもしちゃいけないんだよね」という後味で作られていることが多い。