いずれにせよ強く、便利に、賢くという方面でない「進化」もあると個人的には嬉しいし楽しい。働かないで寝てたら生きていける生き物に進化したい。それもひとつの人類の壮大な夢ではないか。

 ちょうどこの原稿を書いているのが年明けすぐの時期なので、あちこちで「新年の抱負」を目にする。「悔いのない1年にしたいですね」みたいな言葉がよく出てくる。

 そりゃ後悔するようなことはなければないほどいいけど、そんなの無理だ。今年の年末も、誰もが一年を振り返り大なり小なり悔やみ、酒を飲んで、なかったことにするか、暗い気持ちのまま正月を迎える。それを死ぬまで繰り返す。絶対にだ。後悔は避けて通れない。避けられるんなら全員避けてる。どんなお金持ちもどんな賢い人も、生きている限り後悔からは逃れられない。

 後悔をゼロにすることができないからには、「後悔している自分の面倒をどう見るか」を考えておくほうが建設的だなと思う。どうせ今年も何かの理由で泣くほど悔いたり落ち込んだりするんだろうから、そうなったときの対処法を考えておくほうが、避けられない後悔におびえるよりマシな気がする。とりあえず少し前から、私は酒に頼ることはやめようと思っている。

「しょうがねえな」の精神で、
無駄フライドポテトを減らそう

 同じくらい身体に悪いかもしれないけど、今年は何かに後悔したらフライドポテトのバカ食いをしようと思っている。フライドポテトが大好きなので。そう決めておくと、普段の生活でふっとフライドポテトが食べたくなっても「これは“後悔”用にとっておかないと......」という気持ちが働き「無駄フライドポテト」を減らすことができるのだ。

書影『40歳だけど大人になりたい』『40歳だけど大人になりたい』(平凡社)
王谷 晶 著

 後悔があればあるほど、振り返ると人生ってほんと選択の連続&積み重ねだなと思うけど、その選ぶ局面にいるときは、それが選択肢だと気づかないことも多い。それがおっかないけど、でもしょうがないんだよな。ゲーム画面みたいに選択肢が全部表示されていたら、途中でセーブできたらいいけど、そうはならない(だから人はゲームをするのか?)。

 断言するが、生きてるかぎりあなたも私もこの先ずっと恥と後悔にまみれた一生を過ごす。

 つらい。でもしょうがない。しょうがないんだよ。

「しょうがねえな~」としぶい顔をしながら、一緒に1年を乗り越えていきましょう。これからも。