10年連続で算数オリンピック入賞者を輩出している彦根市発の知る人ぞ知る塾「りんご塾」。天才を生み出すそのユニークな教育メソッドを、塾長の田邉亨氏が初公開した書籍『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(ダイヤモンド社刊)が、このたび発売になった。本書を抜粋しながら、家庭にも取り入れられるそのノウハウを紹介する。

【算数オリンピック入賞者多数輩出の塾長が語る】子どもの成長を阻む原因・ワースト1Photo: Adobe Stock

「苦手意識」がついてから一発逆転はかなり難しい

 私は以前、中学2~3年生を対象に数学や英語を教えていました。そのとき、思ったんです。「逆転のための塾はやめよう。他の塾に任せよう」と。

 中学生や高校生になって、すでに苦手意識がついている子どもたちに一発逆転させるのはかなり難しいです。
数学でつまずいている場合、本当は小学校の内容まで戻ってイチからやり直していくのがベストなのですが、なかなかそうはいきません。受験まで時間がないし、本人もプライドがあるからです。

 そうすると、合格させるためには、ただ覚えればいい、手順通りにできればいいというようなところだけを教えて、ごまかしごまかし、合格ラインである7割を取ることを目指すことになります。

 そうやって合格できることはありますが、受かったら受かったで、子どもはしんどいと思います。実際にはきちんと理解できていないんですから。入学した後も、わかっていない部分が足を引っ張って、雪だるま式にふくらんでいって、次第に落ちこぼれていくでしょう。

子どもの成長を阻む一番の要因は「劣等感」

 子どもの成長を阻む一番の要因は、劣等感だと思います。
小学校低学年のうちは、テストでみんな80点ぐらい取るので、劣等感を生む環境にはなりませんが、上の学年になってくると差が出てきますし、模試を受けるようになると偏差値も出ます。すると、真ん中より下の子は劣等感が植え付けられていきます。一度「自分は算数ができない」と思って苦手意識を持つと、払拭するのは困難ですし、モチベーションも上がりません。

 だから、最初から、ちゃんと理解させてあげるということがとても大事。大きくなってから一発逆転を目指して苦労するのではなく、小さいうちから正しく楽しく、その子のペースに合わせてステップアップさせてあげることが大切なのです。

*本記事は、『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(田邉亨著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集したものです。