Dレンジを選んでアクセルペダルを踏み込めば、実質的にほぼ無音のまま、E350eはスルスルと走り出す。その乗り心地は、メルセデスらしい優しさが感じられる快適なもの。昨年7月の国際試乗会でステアリングを握ったモデルは、もう少しピッチングに対して寛容でさらにソフトな足回りだったが、それに比べると日本仕様はフラット感が少し強め。その分、ややソリッドな乗り心地に感じられた。伝統的なメルセデス・ファンにとっては、国際試乗会で味わった“ゆったりとピッチングする”足回りがお好みかもしれないが、安心感や高速ツーリングでの疲労度という点でいえば日本仕様に軍配が上がる気がする。いずれにせよ、その差はごくわずか。本質的に快適性重視のサスペンションであることは間違いない。

 しかも、ワインディングロードを走ると、この快適性が信じられないくらい、しっかりとした足取りでコーナリングしてくれる。とりわけ、コーナリング中のロールを確実に抑えてくれるため、不安感が少なく、ステアリングレスポンスも良好。ハンドリングは正確で、狙いどおりのラインを容易にトレースできる点も高く評価できる。

“エンジン車と電気自動車の架け橋”
見事に果たしている仕上がり

 2Lガソリン(204ps)とモーター(95kW)を組み合わせたパワートレーンについては、急な上り坂から高速道路まで、いっさい不満を覚えなかった。エンジン音は全般的に抑えぎみながら、アクセルペダルを深く踏み込むと抜けのいいサウンドを響かせてくれる点はうれしい。パフォーマンス、官能性ともに、4気筒だからといって悲観的になる必要は決してない。

 200と220dには国際試乗会の際にテストしたが、どちらもMHEVシステムがエンジンを的確にサポートしてくれて、必要にして十分な性能が得られた。なかでもE220dは、ハイブリッド・システムがスムーズなエンジン始動を可能にしているほか、ディーゼルならではの力強さが感じられて実に魅力的。一方のE200はガソリン・エンジンならではの滑らかさと静粛性が印象的だった。

 新型Eクラスは、パワートレーンが電動化されたことにより、発進のマナーなどが電気自動車に近づいたことは間違いない。また、先進的なインフォテインメント系も電気自動車を強く連想させる。その意味でいえば“エンジン車と電気自動車の架け橋”という役割を見事に果たしている仕上がりだった。

(CAR and DRIVER編集部 報告/大谷達也 写真/山上博也)

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