2月28日のこのコラムで、「上海講演で感じた中日関係に春の兆し」という内容を取り上げた。その中で、春の訪れを表現する中国の有名な詩句を使って、日中関係の水面下の改善の気配を紹介した。つまり唐の名詩人である杜甫が書いた「春夜喜雨」という詩にある「潤物細無声」と北宋時代の詩人蘇軾の詩に出ている「春江水暖鴨先知」だった。
前者は、春になると、雨が自然に降りはじめ、世の中の植物たちがこれで芽生える。春風に吹かれるまま、雨は穏やかに夜中まで降り続き、植物を細やかに音も立てず潤(うるお)してゆく、ということを表現し、後者は、春先の川水がすこしばかりぬるんでくるのを、いつも川に入っている鴨が一番先に知るということを指している。
今年の春の足取りは速い。東京周辺では3月下旬、早々に桜の満開を迎えた。4月上旬の後半に予定にしていた桜祭の開催をやむなく取りやめた地方自治体が結構あった。わが家が入っているマンションの下にある躑躅(つつじ)は、一部とは言え、すでに性急に花を咲かせている。日中間の政治的な春の訪れは自然界の春のようにはならず、まだ花満開の状態にはなっていない。しかし、それでも春の気配が濃くなってきているような気がする。
満席で上海~東京間の
往復チケットが取れず
もし私の月の中国出張回数を日中間の温度を測る一つのパラメーターとすれば、3月にはすでに昨年8月までの状態に復活している。昨年の5月から8月までは月に3回も出張で中国を回っていた。島の所有問題をめぐって日中間が激しく対立した9月でも2回中国出張を実現したが、その後はさすがに大きくダウンしてしまった。
その意味では、3月には半年ぶりに月3回の中国出張のペースに戻ったと言えよう。しかも、3回も中国出張をしていた3月下旬には、実際、予定していた出張日の直前にキャンセルした海外出張もあったのだ。キャンセルした理由を言うと、にわか信じてもらえないかもしれないが、なんと東京と上海との往復エアチケットが取れなかったためだった。