近年、日本には不動産バブルが到来している。加えてマイナス金利の解除も決定し、「家を買おうと思っていたけど、今はタイミングじゃないのでは?」と不安に感じている人も多いのではないだろうか。
そんな住宅購入を不安に感じる人の悩みを解決するために『住宅購入の思考法』が発刊された。本記事では、著者の江口亮介氏のインタビューをお届けする。
日本の住宅満足度は低い
――住宅本は世の中にたくさんあります。そういった状況のなかでも『住宅購入の思考法』という名で書籍を書こうと思われたのはなぜですか?
江口亮介(以下、江口):本を書こうと思い立ったきっかけは日本の不動産リテラシーを上げたい、という思いからです。
いわずもがな、ほぼ誰しもが家に住み、日々暮らしています。住宅とは生活の基盤であり、人生を歩む力の源となる存在です。その家に対する知識と、住宅とお金にまつわる意識が高まることで、皆さんの人生がより豊かになると私は信じています。
ただ、日本は国際比較において住環境に対する満足度が低い傾向にあります。60歳以上に絞った住宅の満足度において「満足している」と答える人はアメリカや欧州と比較して半分以下です。国土の広さや地震の存在、国民性も関係していると思いますが、それでも低い。しかしそれは、まだまだ日本の住宅というものをより満足できるものになる余白だとも私は考えています。
――なるほど。まだまだ日本の不動産市場には伸び代があるというのが背景にあるのですね。
江口:そうですね。ただ一方で、住宅を扱う不動産業界に対する全体的なイメージがどこか悪いものであることも残念ながら否めません。口が達者で嘘つき、ブラック企業が多く、粗悪な不動産を買わされて自己破産や訴訟になっているという報道を誰もが一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
不動産といっても賃貸・管理・分譲・投資など、一概には言えませんが、どうしても、「頻度は少ない・専門性は高い・扱う金額は大きい」ためトラブルになりやすいものです。たとえば、外食した700円のランチでは、思っていた味と違ったとしても「まぁいいか」で済みますが、不動産となればそうはいきません。
それゆえに不動産業に携わる我々は多くの業法・ルールに則りサービスを提供することが求められますし、また高い倫理感を持って日々取り組む必要があります。
とはいえ、相談する相手も簡単に見つからないのが不動産業界ですから、買い手や売り手である読者の皆さまに、本というかたちで考え方を知ってほしいと考えました。
――たしかに、マンガやドラマ、YouTubeなどでの不動産コンテンツを見ていると、「誰から買うか」「誰に仲介してもらうか」は重要に思えます。
江口:それは間違いありません。いい住宅取引には優秀な不動産専門家・エージェントが必要不可欠です。特にこれからますます中古住宅の取引が増え、扱いの難しい築古の物件が市場に占める割合も増えていく日本においては、専門性の高いエージェントの重要度が増していきます。
私はそういった能力の高いエージェントがより効率的に働けて、顧客に対してもより時間を使えるような環境を生み出したいと考え、2019年に株式会社TERASSを創業しました。
――「不動産エージェント」というのは「不動産営業」とはどう違うのでしょうか。
不動産営業は、不動産会社やディベロッパーに所属している人のことを指します。こういった人は優秀かそうでないかにかかわらず、担当物件が決まっています。
そのため、皆さんが問い合わせた先にいる不動産営業の仕事は「その物件」を売ることです。そのこと自体は、いい悪いで判断できるものではないですが、仮に悪徳営業担当に当たってしまった場合、売上のためだけにセールスをされるということも少なくありません。
対して、「不動産エージェント」は、不動産営業と顧客のあいだに入る専門家です。エージェントは顧客の味方ですから、「この物件を売らねば」という決まりはありません。あくまで「顧客にあった物件を探すこと」が目的です。そのため、イマイチな物件には、遠慮なく「微妙です」言えますし、本当にあった物件のときは「ここがおすすめです」と迷うことなく言えます。
つまり、皆さんの味方の不動産専門家が「エージェント」です。