家は「生き方」とセットで考えよう

――よくわかりました。不安が多い住宅購入でプロの味方がいるのは心強いですね。 

江口:ただ、エージェントはあくまでサポート役です。住宅購入の主役は皆さん自身であり、「なんでもかんでもエージェントに聞けばうまくいく」わけではありません。

 大事なことは、購入者となる皆さんも正しい知識と思考法を身につけることによって、無用なトラブルを防ぐことです。

 そうすることで結果として、いい不動産会社・エージェントと出会える可能性も増していくでしょう。

――あくまで「自分で考える」ことが重要ということですね。

江口:まさしくその通りです。そのひとつとして、私は日頃から、もっと積極的に住まいや生き方について話していってもらいたいと感じています。住宅とは決してライフスタイルの大きな変化のときにだけ考えるものではありません。

 常に社会や経済の変化を感じながら、自分にとって最適な住宅の選択肢を選び続けるものです。「広い家に住み替えたい」「子どもが自立したから住み替えたい」「子どもが生まれたから広い家に」など、もっとライトに議論していいことなのではないでしょうか。

 これは「いますぐ家を買え!」「今が売りどきだ!」などという話ではなく、家に関する選択肢をなるべく多く持っておくことが重要ということです。家はあくまで「皆さんが幸せになるためのツール」ですから、皆さんの考え方に合わせて都度選択をしていくという感覚が重要です。

 なにか人生の岐路に立たされたとき「家があるから身動きできない」となってしまっては一体なんのための家なのでしょう。それは幸せのツールではなく、負債です。

 ですから、日頃から「将来はこうしたい」「こんな人生を送りたい」と考えたり、話すことをスタンダードにしてほしいと思っていますし、その関連として家のことについても気軽に考えていただきたいと思っています。

 実際に、家を買って失敗してしまう人は、こういったことをせずに、「そのときにお金があるから」という理由で、勢い任せに住宅購入に踏み切ってしまっています。大事なことは「自分がどう生きていきたいか」と連動させて家を考えていくことです。

――ありがとうございます。最後に『住宅購入の思考法』のポイントを教えてください。

江口:『住宅購入の思考法』はストーリー形式であることが最大のポイントです。これまで多くの売買を見てきて、「重要だと思うこと」「気をつけてほしいこと」を物語に落とし込み、読者の皆さんに「住宅購入を疑似体験」していただけるようにしました。

「悪党不動産会社の見抜き方」「どこでつまずくのか」「適正金額はどう決めるのか」「いい物件とはどんな特徴があるのか」などを主人公と同じ目線で体験していただくことで、読み終わったときには「一度、住宅購入を経験した状態」になるはずです。

 失敗できない住宅購入だからこそ、本書で先に落とし穴を確認し、いい住宅購入をしてほしいと思っています。