歴史に名を刻むリーダーは「生き様で人を動かす」

立花 星野さんは、ご自身がガンだとわかってすぐ、僕と三木谷浩史オーナーに連絡をくださいましたが、そのほかの球団関係者には一切打ち明けなかったんです。亡くなるまでの間、どんなに辛くても、人前ではいつも通りに振る舞っておられました。

 そこはやはり、「闘将」というキャラクターとストーリーを貫き通す“卓越した精神力”がそうさせたんだ、と僕は考えています。

 「こうやって生きるんだ」と口で言うのは簡単ですが、その生き方を最後まで体現するのは難しいですよね。星野さんは、それをやりきった。人間として本当にすごいと思います。

――本当に立派なリーダーは、生き様で人を動かすんですね。

立花 その通りです。スポーツに限らず、どんな組織・チームのリーダーであっても、志が高くないと、自分の人生・キャリアとして面白くないはずです。しかも、それを周りで見ている人にとっては、もっとつまらない。

 そういう意味でも、リーダーはスケールの小さい目標ではなく、「日本をよりよくしたい」というような壮大な夢を掲げて努力すべきです。そうすれば、メンバーたちがそれを見て、「この人についていきたい」と自然に慕うようになるのではないでしょうか。

 星野さんはまさにそういう人でしたし、本書ではそういったエピソードを他にもいくつか書きました。星野さんと伴走した日々は、僕にとってかけがえのない宝物です

(本稿は、『リーダーは偉くない。』の著者・立花陽三さんへのインタビューをもとに構成しました)

立花陽三(たちばな・ようぞう)
1971年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、新卒でソロモン・ブラザーズ証券(現シティグループ証券)に入社。1999年に転職したゴールドマン・サックス証券で実績を上げ、マネージング・ディレクターになる。その後、メリルリンチ日本証券(現BofA証券)を経て、2012年、東北楽天ゴールデンイーグルス社長に就任。星野仙一監督をサポートして、2013年に球団初のリーグ優勝、日本シリーズ制覇を達成。2017年には楽天ヴィッセル神戸社長も兼務することとなり、2020年に天皇杯JFA第99回全日本サッカー選手権大会で優勝した。2021年に楽天グループの全役職を退任したのち、宮城県塩釜市の廻鮮寿司「塩釜港」の創業者・鎌田秀也氏から相談を受け、同社社長に就任。著書に『リーダーは偉くない。』(ダイヤモンド社)がある。