「良かれと思ってやっていることが、裏目に出ることもあります」
そう語るのは、「ホスピタリティあふれる営業手法」が話題の福島靖さん。もともと口ベタで、学生時代は友達ゼロ、おまけに高卒。31歳でアメックスに法人営業として入社するも、当初は成績最下位でした。しかし営業になる前、6年勤めたリッツ・カールトンで磨いた「目の前の人の記憶に残る技術」を営業でも実践したことで、多くのお客様から信頼を得て、わずか1年で紹介数・顧客満足度全国1位になりました。
その福島さんが「ガツガツしなくても信頼される人になる方法」をまとめたのが初の著書『記憶に残る人になる-トップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール』です。お客様、取引先、社内の人…人と向き合うすべての仕事に役立つと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、良かれと思って行動して失敗した自身のエピソードを紹介します。(構成/石井一穂)
「即レス」はビジネスの鉄則
営業の世界では、よく「レスポンスが早いほうがいい」と言われます。
お客様としても、質問にすぐ答えてくれる営業の方がありがたいですし、信頼がおける営業だと思ってもらえますよね。
ホテルでも同じで、質問への返答は「正しく即答」が基本でした。
ですがこの「即行動」が、気遣いを自分本位なものにしてしまうことがあります。
即行動したことで気遣いが裏目に出た経験をご紹介しましょう。
ある日の商談で起きた「予想外の事態」
あるお客様から、30代前半の経営者をご紹介いただいたときのことです。
どうやらお客様の前職時代の後輩とのことで「〇〇をよろしく頼みます」と、律儀にお願いまでいただきました。
商談場所に指定されたのは、小さなシャンデリアが掛かっていたり、壁は一面の鏡張りだったりと、とてもオシャレなお店。
なんだか落ち着かずソワソワしていると、紹介いただいたお客様が到着しました。
お客様は僕よりも先に名刺入れを手に取り「初めまして!」と自己紹介。
場所の持つ緊張感も相まって、僕の背筋はよりピシッと正されました。
緊張しながらも無事に契約を終え、お客様がチラッと腕時計に目線を移したところで、「今日はありがとうございました」とお礼をして締めました。
そしてトイレをずっと我慢していたことに気づき、断りを入れて離席しました。