ボケを防ぐという点からは、歌うときにはできるだけ歌詞を見ないほうがいい。歌詞を思い出しながら歌うと、加齢とともに衰えやすい思い出す力を一層強化することができる。

 歌の選び方については、意外なことに、若いときに流行った曲のほうが脳をより強く刺激するので試してほしい。

 昔のヒット曲が耳から飛び込んでくると、ノスタルジックな気分になって、当時の記憶や社会の出来事がよみがえる。自分で歌うとなおさらで、まるで若いころにタイムスリップしたかのような感覚を覚えるはずだ。このとき、感情と強く関係する脳の前頭前野、記憶をつかさどる海馬などが激しく揺さぶられている。

 カラオケは呼吸に必要な筋肉のトレーニングになるほか、のどの筋肉が鍛えられることから誤嚥性肺炎の予防にもなる。心や体、脳の健康維持にメリット大のカラオケ。

 仲間といっしょに、あるいはひとりでも気軽に楽しみたいものだ。

他人との交流が苦手な人は
ペットとコミュニケーションを取る

 日常生活のなかで、人とコミュニケーションを取る機会が多ければ、認知症を発症するリスクは低くなる。非常に有効なボケ予防方法ではあるが、社交性に少々欠けていると自覚し、他人とのかかわりを面倒くさいと思う人はどうすればいいのか。

 交流は大切とはいえ、引っ込み思案の人の場合、新しく友人、知人を増やそうとする行動自体がプレッシャーになるかもしれない。もっとコミュニケーションを取らなければ……というストレスで心が沈むようでは本末転倒だ。

 人と接するのが苦手なタイプなら、別の形のコミュニケーションを図るアイデアがある。ペットとふれあって、楽しい時間を過ごすのだ。

 ペットをなでたり、いっしょに遊んだりしていると、何だか幸せな気分になっていく。じつは、この癒し効果は科学的に証明されている。

 母親が授乳しているときや、恋人同士がハグし合うときなどには、脳内にオキシトシンという神経伝達物質が働く。別名は「愛情ホルモン」。ストレスや痛みをやわらげたり、血圧を下げたりする不思議な物質で、認知症予防にも効果があるとされている。このオキシトシンが、ペットとスキンシップをしているときにも分泌されるのだ。

 人との交流がやや難しい場合、こうした体の仕組みを利用して、ペットを飼ってスキンシップを取ってもいいだろう。オキシトシン効果によって、幸せな気分がもたらされ、認知症の予防につながることも期待できる。

 癒し以外の効果も得たいのなら、ペットのなかでもイヌを飼うのがおすすめだ。イヌを飼う場合、基本的に毎日、散歩をさせなくてはいけない。イヌとの散歩は、とても有効な有酸素運動。早足で歩いたり、急に立ち止まったり、ときには駆け出したりと、イヌの行動に合わせた変化に富んだ動きが求められるからだ。

 しかも、イヌとの散歩はただの運動ではない。外出して五感を使うことによって、脳は強く刺激されて活性化する。飼い主同士で、自然と交流がはじまる機会もありそうだ。ボケを予防するのに、とてもすぐれた方法だといえる。