高配当・半導体・生成AI超進化!5年後の業界地図#1Photo:Bloomberg/gettyimages

日本企業の株主還元策の拡充ラッシュが続いている。東京証券取引所の「資本コストや株価を意識した経営」の要請やアクティビストの増加も株主還元強化への取り組みを加速させる。特集『高配当・半導体・生成AI超進化!5年後の業界地図』(全19回)の#1では、業績堅調で好財務なのに株主還元強化が出遅れている「総還元性向が低い50銘柄」をピックアップ。増配や自社株買いはもちろん、株価の大化けも期待できる銘柄群を紹介する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

株主還元ラッシュに
乗り遅れた銘柄に注目

「空前の自社株買いラッシュ」――。2024年3月期決算では「株主還元強化」を打ち出す企業が続出した。

 23年3月末に東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営」を上場企業に要請した時点では、企業が本当に変化するのか半信半疑だった投資家も多かったはずだ。

 だが今回の東証は24年1月から前月末時点の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を開示した企業の名をホームページに掲載。「本気度」が従来とは異なることもあり、「資本コストや株価を意識」した施策を開示する企業も毎月増加している。

 プライム市場を例に取ると、23年12月末時点では40%(660社)が開示済み、9%(155社)が検討中だったが、24年4月末時点では57%(947社)が開示済み、11%(185社)が検討中。急速に開示が進んでいるのだ。

 米国と比較して株主軽視の傾向が強かった日本企業にとって「大変革」である。海外投資家の増加、インフレ期待の高まり、アクティビストの参戦なども改革を後押しする。

 そもそも資本コストとは何か。簡単に解説すると、資本コストとは市場から調達した資金にかかるコストのことで、ROE(自己資本利益率)が資本コストを上回れば企業価値が向上する。

 ROEは当期純利益÷自己資本で算出する。収益力を示す指標であり、一般的に投資家が期待する利益は8%程度といわれている。ROEの向上には分子の利益を増やすか、分母の資本を減らすことが必要になる。

 とはいえ、利益成長だけでROEを改善するのは簡単ではない。そこで注目されているのが、「増配」や「自社株買い」などの株主還元の強化である。配当や自社株買いで余剰資産を減らせばROEが向上し、株主還元拡充が評価されて株価が上昇すればPBR(株価純資産倍率)が上昇するからだ。

 次ページでは、株主還元拡充と株価上昇の二兎を追える銘柄を一挙公開する。具体的には、純利益に占める配当と自社株買いの割合を示す「総還元性向」の引き上げが期待できる50銘柄をリストアップ。同時に、業績や財務などの条件も加えているから「株主還元拡充のプレッシャーが高まりやすい企業」が前提となっている。さらに、登場する銘柄の賢い買い方も紹介している。